関節因性筋抑制 -Arthrogenic muscle inhibition-

膝変形性関節症の方の運動療法を考える場合、「膝変形性関節症の患者さんは神経系の抑制性反射メカニズムによって、大腿四頭筋の筋力が低下している可能性が高い」ということを考慮しなくてはなりません。

この神経系の抑制性反射メカニズムのことを関節因性筋抑制(Arthrogenic muscle inhibition:以下AMIと略)と言ったりします。

このAMI。
arthro = 関節、 Genic = 生じる、という意味から、関節を起源とする筋肉の抑制であることが分かります。

筋肉が抑制されると脳と筋肉が上手くコミュニケーションできなくなり、筋肉を上手く使えなくなります。

「力を入れたくても、神経抑制によって力が入らない」

その結果使われなくなった筋肉は、筋萎縮を起こすという流れに陥ります。

このAMIという症状は、非常によく見られる症状なのにも関わらず、実はこの存在をちゃんと理解している施術家が少ないのが現状。

AMIに関する論文を読むと
“neural inhibition of uninjured musculature surrounding an injured joint.”

つまりは、

neural inhibition=”神経抑制”
uninjured musculature=”傷ついていない筋組織”
surrounding an injured joint=”傷ついている関節周辺の”

要するに”傷ついてる関節周辺のノーマルな筋に神経抑制が起こってる”というのががAMIの正体。

これは神経の働きとして、「関節に起きた怪我」をきっかけに、周りの筋肉に「静まれ!」と抑制のシグナルを送り始めます。
筋肉そのものには一切損傷が起こっていませんが、その筋肉を支配している神経が「動いてはいけない!」というシグナルを出すので、筋の活動が抑制されてしまうのです。

このような場合、筋の抑制シグナルを抑えない限り、トレーニング、治療効果も薄いことはわかると思います。

実はこのような症状ってよくあったりします。

例えば、捻挫です。
内反捻挫を繰り返すということも、前距腓靭帯が伸びてしまっているからというのもありますが、その前に靭帯損傷によって本来働くはずの腓骨筋などの筋力低下などがこのAMIによって生じていたという可能性も考える必要があります。

関節のケガをしたことで、筋力が落ちたという方はAMIによるものかもしれません。
このAMI、TENS(経皮的電気刺激)を使って抑制性の反射メカニズムを改善すること、あるいはクライオセラピーなどで冷やすことで抑制を抑えることができることがわかっています。

治療家としては症状を知った上で、それに対する効果的な治療プランを選択することが求められますね!

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  4. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  5. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2017-3-18

    バランスエクササイズの効果

    バランス能力に影響を及ぼす因子として、下肢筋力、年齢、足関節や股関節の柔軟性などがあげられ、特に60…
  2. 2014-9-27

    頭痛にお悩みの方、群発頭痛って知ってますか?

    出産よりも痛いといわれており、心筋梗塞、尿路結石、と並び生きているうちに味わえる三大痛の一つとされて…
  3. 2015-1-15

    相撲における『股割り』『腰割り』の重要性

    相撲での柔軟性というと、180度脚を広げて胸を地面につける「股割り」が真っ先に思い浮かぶ、それは、相…
  4. 2015-7-8

    ヒトが美味しいものを求めるのはなぜ?

    味覚には、甘い・苦いといった味の質の認知的な分析の側面と、美味しい・不味いといった情動性の側面があり…
  5. 2017-1-25

    メカニカルストレス

    メカニカルストレスとは、「力学的ストレス」のことで、何かを持ち上げたり引っ張ったりするときに筋肉や腱…
ページ上部へ戻る