強くなるための動作術の中には歩行を武としてとらえています。

歩くってどういうことですか?

歩くとは、片足で身体を支えながら移動することです。移動は、動物にとって食べ物を得るための最も基本となる運動です。ヒトはそれを片足ずつ地面に置くことで行います。両足が地面から離れての移動は、跳ぶという動作か、走るという動作になります。基本はしっかりと片足で立てることであり、一歩前に片足で立つことの連続です。

この歩きの動作は『裸足だったら、どのようにして歩くか』ということを前提に考えた歩き方です。履物によって補われると、足そのものの構造は弱くなります。そして履物の性能が高くなるにつれ、構造ばかりではなく、脚の振り出し方、どこで接地するかなど歩き方も当然変化します。それを本来の骨格が持つ動作に戻して、より楽で力のあるものにしたいのです。

歩くということにおいて、まず片足でしっかり立てることが最初の課題になります。一歩一歩をしっかりからだを支えながらの移動です。現代のように舗装された道路もなく、整理した土地もほとんどない時代ではよりしっかり立つことが重要だったに違いありません。

そこで身体を支えて立つために、足裏はフラットに接地し、脛の骨はなるべく真っ直ぐ地面に立てておきたい。ウォーキングのように踵接地で脛を斜めにして身体を支えるという体勢は、人間の歩きとしては特殊な条件と、特殊な目的のためのもので、普通の歩き(元々の歩き)ではないと考えたほうがいいと思います。端的に言って、それは平坦な道、あるいは踵を守る靴があってはじめて成り立つものですし、楽で効率的な移動を目指しているわけでもない。

生活する場での歩きは、山道でも、砂利道でも、雪道、泥道、坂道、階段、そして平坦な道でも同じ動作でまかなえるのです。足裏の接地部分も、脚部の関節もそれほど大きく変えずに済む、“統一された歩き”がより自然で、応用範囲の広いものだといえます。

歩くとは、支持脚と遊脚を切り替えながら、一歩前に立つを繰り返しています。これを一般的によくみられる踵接地の歩き方と比較すると、その違いがよくわかります。片足立ちを繰り返す歩きでは、当たり前ですが、片足で身体を支えます。足裏は踵とつま先がほぼ同時に接地し、体重が乗ったときは、フラット接地になります。後ろ足には体重が乗っていないので、つま先で地面をけることなくそのまま踵から上がる、いわゆる「あおり足」となって前へ、運ばれ、次の支持脚になる。踵接地では、足は斜めから斜めへと切り替わるので常に前後の足で身体を支えています。

片足立ちは身体支えているだけなので、止まることも、方向を変えることもそこから攻撃に転じるのも自由です。反対に踵接地の場合は、前に出した足の踵と後ろの足のつま先とで支えています。その姿勢で止まることはできても、大変不安定で一度接地してしまうと前に動き続けるしか選択しがなくなってしまいます。しかし片足立ちよりも歩幅は大きくとれて早く歩けます。そういった意味では便利な歩き方だと思うのですが、歩行中両足で身体を支えてしまう時点で下半身の身動きがとれなくなり、そこに隙が生じてしまいます。

武術の世界では『歩けばこれ即武道』という言葉があるように日常であるくことが武でなくてはならないと思います。

 

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