壊せるからこそ治せる

古い時代の道場では、弟子の怪我は道場の恥とされてきました。
弟子に怪我をさせるような稽古の仕方、教え方しかできないできない柔術家は恥ずかしいというのが当時の常識です。
そして、怪我をした弟子を治せないような師は更に恥ずかしいとされてきました。

それでもお互いに真剣に技を掛け合えばどうやっても体に歪みや乱れが起きます。
ほんの少しずつ重なっていく歪みや乱れが積もり積もって大きくなると、次第に傷害がでてきます。
これを現在ではスポーツ傷害と呼び、古流の時代には遠身の当(とおみのあて)と呼んでいました。

古流が現代スポーツと違うのは、この状態を治す術を知っていたことです。

現代よりもはるかに長い時間行っていたであろう道場稽古の後に丹念に行われていたのが「導引術」と呼ばれるもので、張りつめた筋肉を全身くまなく弛めていきます。
簡単に関節を砕くほどの知識がから可能となる柔術独自の活法です。
壊す道筋を知り使いこなすことができるからこそ、反対の道筋を辿り修復することができるのです。

たとえば骨折に関して古流の手技は、手の感触で詳細に見分け、添え木を当てて治療します。
これに対して西洋医学は、レントゲンで骨折を診てつないだら、ギブスで固定します。
古流手技でつないだ骨は、翌日も手の感触でつないだ骨折を再び診て、1日の生活でずれた箇所をまた修正します。
毎日のそのズレを少しずつ感じて修正するから、骨が完全に寄り、くっ付く時には少しのズレいもない。
これは先人の職人芸ともいえます。

こういった治療技術をもった人たちがいた昔の日本は、医療大国でした。
現代のように病院が町や村にはあったわけではないです。
しかし町や村には必ず柔術家がいました。
柔術家は巧みな技で町や村に住む人たちの健康に貢献していたのです。
今みたいに病気になってから医者に行って薬や注射で治療するわけではなく、悪い状態に身体がいかないような知恵を柔術は活法としてもっていました。
柔術家たちがこの日本を健康大国として影で支えていたということがわかります。

 

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