上肢の進化

手の原器は魚類の胸鰭(むなびれ)であると考えられてきました。
約2億5千万年前より生息すると考えられるシーラカンスの胸鰭には他の魚類には見られない手根骨らしき骨が存在します。
魚類が両生類、爬虫類へと進化するにつれて、鰭は次第に手足へと形を変え、それに伴い前腕や上腕が発達し最終的に四肢へと成長したのです。
一方、四肢が未発達な両生類では体を引きずり這って移動することになります。

進化が進むにつれて爬虫類の四肢は次第に長くなり、体を地面に引きずることなく早く動いて獲物を捕まえ、敵から早く逃げるようになりました。

哺乳動物になると四肢の発達は更に著しくなり、動く速度が早くなるばかりでなく行動範囲も著しく広がったのです。
時代は変わり、約450 万年前に人類は直立歩行を始めるようになり、四足動物から二足動物へと進化しました。
前脚は上肢となり、後脚は下肢となったのです。
そしてこれを機に、上肢の機能は大きく変わってきました。

四足動物の前脚で最も重要な役目は後脚と共に体幹を持ち上げ、移動させることにありました。
即ち、重力に抗して脚を伸展させる伸展運動が最も重要な機能だったのです。

ところが、二足動物になり体幹を持ち上げ移動させる役目は下肢が引き受けることになり、上肢の最も重要な役目は手で木の実をもぎ取り口に運んだり、手に持った道具で獲物を仕留めるのが主となりました。

即ち、手の握り運動や肘関節の屈曲運動が最も重要な機能と変化してきたのです。

言い換えれば、前脚が上肢になった時点でその最重要機能が伸展運動から屈曲運動へと大きく転換したとも考えられます。

それと同時に獲物を掴み、道具を握る手が上肢で最も重要な効果器の役目を負うことになったのです。

手の使用が大脳の発達を促し、手と大脳は相互に依存しながら急速に発達しました。

そして,効果器となった手の使用を容易にする為に上肢全体が変化していきます。

例えば、肩関節は可動性を増して手をあらゆる方向に動かせるように,肘関節は屈曲角度を調整して手と体幹との距離を素早く変える役目を受け持つようになったと考えられます。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  4. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  5. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-9-1

    コンパートメント症候群の急性症状と慢性症状

    コンパートメント症候群は、コンパートメント内の圧力が局所の動脈圧を超えた状態で発生し、筋および神経の…
  2. 2015-5-5

    暑熱障害と体液

    生体は水負積(脱水率)の程度に応じて種々の症状を示します。…
  3. 2016-2-9

    呼吸調整中枢とその機能

    呼吸は日常の活動に常に随伴して行われます。つまり、呼吸は多くの運動活動と調和する必要がありま…
  4. 2015-12-6

    音楽の嗜好性

    人はそれぞれさまざまな好みをもちます。音楽も例外ではありません。一口に音楽の好みとい…
  5. 2015-8-9

    300億個もの脂肪細胞とエネルギー恒常性

    脂肪細胞は脂肪組織の主要な構成細胞であり、エネルギーを細胞内に中性脂肪として蓄積しています。過剰…
ページ上部へ戻る