筋の大きさとそのメリットデメリット

スポーツの世界には、筋をつけすぎると重くなる、動きが鈍くなる、といった通説があります。

スポーツに限らず、筋の発揮能力はそのサイズによって決まるわけですから、同じ運動スキルをもっているなら、筋が大きいほどパフォーマンスは上がることになるはずです。

しかし実際には、筋が大きいほど有利になる競技ばかりではなく、筋が大きくなると不利になる、邪魔になるということもあるでしょう。

当然、筋には質量があり、筋は身体を動かすエンジンであるとともに負荷でもあるため、そのメリットとデメリットの兼ね合いから競技ごとの理想の体型というのが存在するわけです。

例えば、短距離走選手では、筋によるメリットはそのデメリットを上回るため、体重当たりの筋量が大きくなるほど走行速度は上がることになります。

反対に長距離走選手では、大きくなりすぎた筋は呼吸・循環器系に対しての負荷になるため、明らかなマイナスとなるでしょう。

筋が大きくなることにより起こる問題には、体重が増加することのほかに、四肢の慣性モーメントが増加することが挙げられます。

慣性モーメントとはつまり回転のしにくさであり、これが高くなるほど物体は回転しにくくなります。

例えば、フィギュアスケートでスピンをする際に腕を折りたたむのは、慣性モーメントを小さくするためでもあります。

筋を無闇矢鱈に大きくさせると関節を回転させるために必要な力が増加するため、慣性モーメントを考慮して筋を大きくさせる位置を考える必要があります。

競走馬つまりサラブレッドを思い出してみると、腰、臀部は大きく発達し、末端に行くほど細くなるという特徴をもっています。

末端に余分な重りがないため、慣性モーメントは小さくなり、関節ひいては馬体を動かす効率が高くなります。

この強い推進力を発揮する筋を持ちつつ、より回転させるという力学的構造を持っているからこそ、サラブレッドは500kgを超える身体をもちながらあれだけ速く長く走れるわけです。

とはいえ、四肢が細ければいいというわけでもなく、細くなりすぎればそれだけ力も弱くなってしまうため、やはりそれもバランスとの兼ね合いになるでしょう。

 

 

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