パワートレーニングとストレッチショートニングサイクル

走り高跳びの踏切り動作では、前半に下肢関節が踏切りの負荷により強制伸長され、伸筋群が強制的に伸ばされながら伸張性収縮(エキセントリック収縮)により大きな力を発揮し弾性エネルギーが筋と腱に蓄えられる。
動作の後半では、こうした伸筋群が縮みながら爆発的な短縮性収縮(コンセントリック収縮)を起こし跳躍動作が行われている。

神経生理学的に言えば、筋は強制的に伸長すると収縮要素の力-速度の特性に変化が生じることが示されており、その後に続く短縮性収縮では伸長反射によって筋力が増大されることが示されている。

伸長反射とは筋肉が反射的に収縮する力である。

 

筋紡錘とその他の筋骨格系の感覚器官が筋肉の伸長を検出しインパルスが脊髄に送られ、より強い収縮を起こすためにインパルスが反射的に脊髄から筋へと戻される現象である。

 

高跳びの踏切り動作においてもこうした伸長反射による爆発的な筋収縮力が利用されている。

また、力学的なモデルから踏切り動作を考えれば、筋はエクセントリックな活動中に貯蔵した弾性エネルギーをコンセントリックな局面で放出しており、この切り返しが遅い場合は筋は弾性エネルギーを熱として放出し散逸し、切り返しの時間が短いほど弾性が増長されるといわれている。

 

このため、高跳びに限らず多くの陸上競技における跳躍種目では、踏切り動作における接地時間がなるべく短くするように指導されることが多い。

 

このように跳躍動作において、筋肉の素早い「伸張性収縮(ストレッチ)」と「短縮性収縮(ショートニング)」の間に、伸張反射や弾性エネルギーを利用し爆発的な力を発揮するメカニズムは SSC(ストレッチショートニングサイクル)と呼ばれる。
パワートレーニングとは SSC による爆発的なパワーの発揮を身につけるためのトレーニングである.

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