栄養不足は細胞内ホメオスタシスを乱す

食物に含まれるタンパク質由来の炭素原子は体内でさまざまな用途に使われ、DNAになったり、脂肪になったり、二酸化炭素になったりもします。

これほどたくさんの相互変換の可能性があるとすれば、細胞内の生化学的分子濃度は大きく変動するだろう考えることもできます。

例えば、細胞内のオキサロ酢酸濃度は、オキサロ酢酸の原料を含むものを食べたかどうかで変わるでしょうし、代謝にオキサロ酢酸が使われたかどうかでも変動するであろうと考えられます。

しかし驚くべきことに、これらの物質の細胞内濃度は、ほとんど一定に保たれています。

細胞は異化と同化に関わる酵素を制御し、細胞内濃度のバランスを維持しています。

このホメオスタシスは異常な状況下でしか乱されることがありません。

そのような異常な状況のひとつに栄養不足があります。

もしヒトが、同化作用と生物学的活動に必要な量のATPとNADHを産生するために十分な食物を摂取しない場合、体の中でまず最初に使われる貯蔵エネルギー源は、グリコーゲンとなります。

この貯蔵源は長続きせず、次には脂肪が使われます。

脂肪酸が分解されるとアセチルCoA濃度が上昇します。

しかし、脂肪酸は血中から脳へは移行できないため、何か他のものをグルコースに変換しなければなりません。

この糖新生という経路は、ほとんどの場合、タンパク質を分解したアミノ酸を原料とします。

十分な食料が得られないときはタンパク質、脂肪を使わざるを得なくなります。

こうした飢餓状態が数週間に及ぶと、貯蔵脂肪は底をつき、残された唯一のエネルギー源はタンパク質だけとなります。

この時点で、筋タンパクや免疫に働く抗体などの重要なタンパク質が分解され始めます。

このようなタンパク質が失われることにより、重度の病気がもたらされ、最終的には死に至ります。

 

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