記憶と忘却

脳の記憶は、コンピュータとは異なり、永久的ではありません。

むしろ、時間が経つと自然に消されるのが一般的です。

これはいわゆる忘却という現象で、記憶は、記銘・想起・保持そして忘却と段階づけられます。

面白いことに覚える過程も忘れる過程も、記憶に関係する脳の現象であるにも関わらず、意識的に操作できるのは覚えることのほうだけであり、忘れるという行為は意図的にはできません。

むしろ忘れようとすればするほどより強固に記憶され、思い出されてしまいます。

逆に忘れるという現象は意図的に操作できないため、比較的容易に調べることができ、19世紀の心理学者エビングハウスは忘却について詳しく検証しています。

エビングハウスは、意味のなさない3つのアルファベットの組み合わせを、被験者に覚えさせ、その記憶がどれくらいの速度で忘れられていくかを調べました。

その結果、初めの4時間の間に半分近くを忘れ、その後は、残りの記憶を少しずつ忘れるというものになりました。

つまり、覚えた直後に多くを忘れて、それを乗り越えて残った記憶は意外と長く保持される傾向にあるということになります。

これを表した曲線は「エビングハウスの忘却曲線」として知られます。

エビングハウスの忘却曲線から考えると、例えばテストの前日に詰め込んで勉強するよりも、当日の朝、しかもテストまでの4時間が勝負であると考えられます。

また、記憶には相互的に干渉があり、ある程度類似性のあるものを覚えようとすると、以前の記憶や新しい記憶が妨げられてしまうことがあります。

つまり、テストの勉強のための詰め込みは、例えば100個全部覚えようとするよりも、ある程度範囲を絞って覚えるほうが干渉の影響を抑えることができるというわけです。

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