胸腔と椎間板と脊柱

膝を屈曲し体幹を垂直にして10kgの重量を持つと、S1を通る下方への力は、傍脊柱筋に141kgの負荷を及ぼします。

同じ重量を、膝を伸展し体幹を前屈して持ち上げると250kgの力が要求され、もし同じ重量を腕を伸展させて持つと363kgとなります。

同時に、腰仙部椎間板に作用する力は282~726kg、もしくは1200kgに等しい値となり、後者の値は椎間板を破壊するのに必要な力(若年者で800kg、高齢者で450kg)を明らかに備えていると考えられます。

この明らか負荷重量の相違は、2つの理由によって説明されます。

1つは、椎間板に伝わる全衝撃力が、髄核のみで支えているわけではないことが挙げられます。

椎間板に力が加えられると、髄核にはその7割ほどが伝えられ、残りの3割は線維輪に分散されると言われています。

髄核に比べ、線維輪は衝撃を支える働きが弱いため、椎間板に作用する力が軽減されにくいというわけです。

第2に、体幹を全体的に捉えたとき、腰仙部と腰部椎間板にかかる圧力が軽減分散されることによります。

重りを持ち上げるとき、声門とすべての腹腔の出口を閉じるバルサルバ効果が自然と働きます。

バルサルバ効果は、呼気筋群、特に腹筋群の収縮によって胸腹腔を閉鎖された腔にします。

このようにして橋腹腔の内圧が上昇すると、脊柱の前面は硬い梁のようなものに変わり、骨盤や会陰に力に伝達します。

この膨張構造の存在によって、椎間板に作用する長軸方向の圧力を減少させています。

例えば、Th2-L1間では50%、L5-S1間では30%減少させます。

同様に傍脊柱筋に及ぼされる力は55%減少します。

したがって、このメカニズムは脊柱を保護するのに大変有益となりますが、非常に短い時間しか作用しません。

また、完全な無呼吸状態になるため、心血管系に与える影響が大きく、例えば脳静脈圧上昇、静脈還流減少、肺毛細血管減少、肺血管抵抗増大をもたらします。

このメカニズムが働くのは、腹筋群が正常で、しかも声門や腹腔の出口が閉鎖されることが予想されるときであり、腹腔内の内圧上昇は、最終的には椎骨静脈叢に血流を送り、結果的に脳脊髄圧上昇をもたらします。

このような状態は無制限に続くわけではなく、重い物を持ち上げるときのように短時間にしか起こりません。

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