骨盤の関節に及ぼす姿勢の影響

人が楽な姿勢で立っているとき、骨盤の関節は体重による重力によって動きを起こします。

脊柱・仙骨・腸骨・下肢は、股関節と仙腸関節を介して、協調したシステムを構成しています。

たとえば、S1の上面に作用する体幹の重みは岬角を低め、仙骨は回旋、つまりうなずき運動を生じます。

この動きは、前仙腸靭帯によって速やかに制限されます。

これらの動きのなかではとくに坐骨結節から離れる動きをする仙骨尖端の動きが制限されますが、これには仙棘靭帯と仙結節靭帯が関与しています。

同時に床反力は大腿骨によって伝達され、股関節に伝わり、仙骨に働いて体重とともに回転モーメントを生じます。

その結果、腸骨が後方に傾斜することになります。

この骨盤の後方傾斜は仙腸関節に生じるうなずき運動を増強させます。

人が片脚起立をしたときや歩行中一歩踏み出したとき、床反力は支持脚によって伝達され、同側の股関節を上行させますが、反対側の股関節は持ち上げられた足の重みで引き下げられる傾向にあります。

この結果、支持側で股関節が突き上げられ、反対側で引き下げられるため、恥骨結合のレベルで剪断力が生じます。

正常では恥骨結合の強さによりいかなる動きも妨げますが、もし恥骨結合に脱臼があれば、歩行中結合部の上で明らかな偏位が観察できるはずです。

同様に、歩行中左右の仙腸関節は、反対方向に動くと考えられます。

仙腸関節もまた、それを取り巻く強靭な靭帯によりこの動きを妨げていますが、一側の仙腸関節に外傷性損傷が生じると異常な動きが生じるようになり、疼痛が一歩ごとに感じられるようになります。

このように、正常な立位や歩行がとれるのは骨盤の機構的な力に依存していると言えます。

これに対して、仰臥位をとったときをみてみると、股関節が屈曲位なのか、伸展位なのかによって仙腸関節はさまざまな動きを生じます。

股関節が伸展されたとき、屈筋群が骨盤を前傾させ、仙骨尖端を前方へ押すように引きつけます。

これは仙骨端と坐骨結節との間の距離を縮め、同時に仙腸関節の回旋を引き起こします。

すなわち、起き上がり運動となります。

分娩の早期では、骨盤・仙骨がこの位置を取ります。

これは骨盤上口を広げる起き上がり運動であり、骨盤内へ胎児の頭が下降するのに有利な肢位であると言えます。

これに対して、股関節が屈曲されたときは、ハムストリングが骨盤を牽引して、仙骨に対して骨盤を後方へ傾斜させる傾向があります。

つまりこれは、うなずき運動であり、骨盤上口の前後径を減少させ、骨盤下口の口径を増加させます。

分娩の娩出期には、骨盤・仙骨はこの位置あり、骨盤下口を通過する胎児の球の娩出に有利な肢位であると言えます。

股関節伸展から股関節屈曲への肢位の変化の際、岬角の偏位の平均可動域は5.6mmであるとされています。

大腿のとる肢位によって影響をうける骨盤・仙骨の位置の変化は、骨盤腔の口径を変え、分娩を容易にさせる働きがあります。

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