抑制機能と加齢

加齢は、さまざまな機能の低下を引き起こしますが、すべてが減退するわけではなく、いつまでも同じレベルを保っている機能も存在します。

注意機能のうちの抑制機能はそのような機能のひとつです。

抑制機能とは、不必要な情報へ注意が向き、それに対して行動を起こそうとするとき、それをストップさせる働きのことです。

これを復帰抑制といいます。

これは、注意が最初の場所や対象物に戻ること対してストップをかけるという意味を指します。

例えば、文章を書いているときに、文字を間違えてしまい、それを消したあとまた間違えてしまうというようなエラーです。

復帰抑制には、位置に対して復帰を抑制するだけでなく、位置はどこであろうと同一の物体に対する復帰を抑制する場合も含まれます。

この物体への復帰抑制の現象について、若齢者ではみられるという報告や、物体への復帰抑制はみられないといった報告、高齢者においても物体への復帰抑制はみられないといったという報告があります。

これらのことは、復帰抑制全般が加齢の影響を受けないわけではなく、位置への復帰抑制は加齢の影響を受けにくい一方で、物体のそれは加齢の影響を受けやすいことを示しています。

つまり、復帰抑制機能は単一メカニズムから成り立っているわけではなく、一部の特定機能のみが加齢の影響を受けるという可能性が示唆されます。

この加齢の影響については、脳神経回路の発達差が関係していると考えられます。

位置の定位に関する情報(定位情報)と、物体の同定に関する情報(同定情報)は、脳内において異なる視覚経路を通ります。

情報は、一次視覚野に到達したのち、定位情報は背側経路を、同定情報は腹側経路を経て頭頂連合野で統合されます。

それぞれの経路の発達は異なり、背側経路は乳児期初期にシステムが構築され、高齢期後期まで残存します。

一方、腹側経路は乳児期後期にシステムが構築され、高齢期初期に衰退します。

つまり、同定情報を伝達し処理する腹側経路が高齢期になると衰退し始めているため、物体への復帰抑制がみられなくなったというわけです。

その一方で、定位情報を伝達し処理する背側経路は高齢になっても残存するため、位置への復帰抑制が維持されていると考えられます。

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