僧帽筋上部線維の緊張の役割と筋力低下

正常な僧帽筋上部線維の安静時の緊張は、鎖骨に付着するため肩複合体の上方への支持に関与します。

肩甲骨に直接停止していないものの、直立位において肩甲帯を支持する役割を僧帽筋上部線維が果たしているということは多くの調査で分かっています。

それでは果たして、僧帽筋上部線維の筋力低下または過緊張は肩甲帯にどのような影響を与えるでしょうか。

僧帽筋上部のみの筋力低下は稀ではありますが、肩甲帯の挙上力の減少に関与すると考えられています。

僧帽筋の筋力低下が存在する場合では、直立位では肩甲骨下制、内転、前方傾斜が特徴的となります。

僧帽筋麻痺がある場合、鎖骨は下制されますが、その程度はそれほど大きくなく、また下制のすべての原因となるほどではありません。

僧帽筋上部線維の筋力低下を伴う典型的な姿勢異常は、弱化した僧帽筋上部線維の安静時での緊張の喪失の結果ではありますが、しかしそれは僧帽筋全体の筋力低下の結果である可能性もあります。

つまり、僧帽筋上部の筋力低下が及ぼす影響は少なからず存在するが、他の要因が関与する可能性を除外できないと考えられます。

逆に、僧帽筋上部の緊張は、頭頸部の関節可動域を制限するだけでなく、挙上した肩甲帯や頭部の非対称性と関係します。

しかし、他の要因による肩甲骨挙上も存在するため、純粋な僧帽筋上部線維のみの緊張と区別することは難しいものとなります。

もし僧帽筋上部線維のみが緊張するならば、肩甲骨挙上筋は、肩甲骨上方回旋に伴って出現するであろうと考えられます。

そのため、肩甲骨の位置を注意深く評価する必要があります。

 

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