横隔膜は、呼吸と姿勢安定化の2つの役割があります。
Lewitは、健全な呼吸パターンが実行されない限り、他のいかなる運動パターンも健全ではありえないと示唆しています。
Lewitは、適切なパターンで呼吸できない人は、横隔膜が姿勢安定筋として働くためのコーディネーションや持久力および筋力が不足している可能性が高いと考えました。
Lewitの研究に基づくと、呼吸は、運動能力の向上に必要な基本能力であると考えられ、まず、効率的な呼吸パターンの獲得を優先する必要があります。

また、横隔膜の活動が体幹の安定性を補助しています。
横隔膜のコントロールを最適化する呼吸パターンは、コアスタビリティにとって基本的に重要であることを意味しています。
全人口の10%が不健全な呼吸パターンに苦しんでいます。
その割合は、喘息患者では30%に、不安症の患者では83%にまで跳ね上がります。
コアスタビリティとは、骨盤上の体幹姿勢と運動のコントロール能力であり、統合された競技活動において、力や運動を最大限に発揮して、末端部位までの転移をコントロールできる能力です。
すなわち、近位の安定性が遠位の可動性を決定づけます。

Cookによると、『最良のコアトレーニングプログラムとは、呼吸をしながら、また、所定の競技や活動でコアが受けるストレスを模倣するように機能的に四肢を動かしながら、自然でニュートラルな位置に脊椎を保持することを要求するトレーニングである』と言われています。
活動中にニュートラルな脊椎を保持することは、脊椎の整合性を維持するとともに、身体の様々な構造を傷害から守ると考えられています。
Kolarは、四肢の運動中に横隔膜が重要な働きしていることを見出しました。
Kolarはまた、別の研究において、腰痛とコアの機能、および横隔膜の機能の間の関連性を証明しました。
Kolarは、慢性腰痛(LBP)の患者18名と腰痛のない人29名を対象に、通常呼吸中および通常呼吸を行いながら外的負荷に抵抗して行う上肢と下肢の等尺性屈曲運動中に測定を行いました。
その結果Kolarは、慢性腰痛(LBP)群は横隔膜の移動がより小さく、横隔膜がより高い位置にあることを指摘しました。
研究者らは『横隔膜の呼吸運動はその安定化の働きと同時に起こる。横隔膜の身体安定機能が弱い人はこの呼吸との同時性に障害があり、静椎分節への過剰な負荷が生じる』と述べています。
この知見は、横隔膜の活動が不十分だったりコーディネーションが悪かったりすると、脊椎の安定性が損なわれることを示唆しています。

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  4. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  5. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-1-24

    高齢者の運動効果

    歳をとってからでも筋肉トレーニングをしたら効果は出るのでしょうか??高齢者でもしっかりと筋ト…
  2. 2015-4-25

    食事と咀嚼

    食べるということは、生きるため健康のためにはとても重要な事になります。食べるときは、歯だけで…
  3. 2015-9-12

    免疫という生体システム

    免疫という生体システムは、自己と非自己を区別するシステムであります。無限に存在する非自己…
  4. 2014-9-27

    もうひとつの脂肪細胞「褐色脂肪細胞」

    人間は、体温を一定に保つ恒温動物です。ヒトは寒いと感じると、身体に溜めたエネルギーを燃やし、…
  5. 2014-9-27

    スポーツマッサージの効果って?

    マッサージには皮膚や筋肉の血行をよくするとともに、マッサージを施した部分だけでなく、全身の血液循環を…
ページ上部へ戻る