上腕二頭筋の関節内での走行

上腕骨頭は関節窩に対して非常に不安定なポジションで位置しています。

その不安定さを補うために、関節窩にはさまざまな工夫がなされています。

例えば、関節軟骨は関節窩の不規則さを円滑にし、関節唇は関節窩を深くします。

しかしそれでも関節面のかみ合わせはわずかなものなため、しばしば脱臼が起こり得ます。

関節窩の上部では、関節唇が完全に骨に固定されておらず、その内縁は半月板のように関節腔内で自由になっています。

関節の基本肢位では、関節包の上部は関節包下部が緩んだとき緊張します。

この関節包の緩みと滑膜のしわの広がりは、肩が外転するのを可能としています。

関節上結節と関節唇の上縁から、二頭筋長頭腱が起こっています。

二頭筋長頭腱は、結節間溝の中で関節腔から現れてくるように関節包のほうに深く潜っています。

重い物を持ち上げるために二頭筋が収縮するとき、その長・短両頭が、肩の関節面の適合性を維持するために重要となります。

烏口突起に付いている短頭は、肩甲骨に対して上腕骨を引き上げ、ほかの上腕縦方向の筋とともに働いて、肩の下方脱臼を防止しています。

同時に、長頭は上腕骨頭を関節窩に押し付けています。

このことは、長頭が主に働く外転時に言えることになります。

二頭筋長頭腱が断裂すれば、肩の外転力は20%低下すると言われています。

初期の二頭筋の緊張度は、その水平な関節内径路の長さに影響されます。

この径路は、上腕骨が屈曲・伸展の中間位と外旋時に最高となります。

これらの肢位では、長頭の効率は最も高まります。

上腕骨が内旋すると二頭筋の関節内径路は小さくなり、その効率も低下します。

二頭筋は、付随する種子骨がないため結節間溝の部位で折り曲げられ、激しいストレスの格好の的となります。

このストレスに耐えられるのは、筋が良好な状態にあるときのみとなります。

もしコラーゲン線維が年齢とともに変性すれば、関節内を走る腱は、わずかな力でも断裂し、その結果、肩関節周囲炎を思わせる典型的臨床像をきたします。

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