肩甲上腕関節とその調整器

上腕骨頭と関節窩との間の緩い適合の結果、肩甲上腕関節では広範囲な可動域が可能となります。

そのためそれを取り囲んでいる関節包には運動を制限するような太さをもつ靭帯がありません。

つまり、肩甲上腕関節では、安定性を犠牲にして可動性を優先する構造になっていることになります。

肩を交差するほとんどの筋は肩甲上腕関節に対して何らかの形で動的安定性を何らかの形で提供していますが、腱板を構成する筋はこの機能に特に優れています。

腱板の基本的形態・機能は、肩甲上腕関節における自然の安定性の不十分さを代償することにあります。

腱板構成筋のの遠位付着部は、その近位上腕骨への停止前に肩甲上腕関節包と合流します。

この解剖学的配列によりいったん神経系からの指令を受けると関節周囲を保護する強固なカフが形成されます。

身体のどの部分をみてもこのようにたくさんの筋が関節周囲の密接な構造部分を形成する部位はありません。

腱板によって生じる力は、上腕骨を自動的に回旋するだけでなく上腕骨を関節窩に安定させ、中心に向けます。

したがって肩甲上腕関節の動的安定性は健常な神経筋系および筋骨格系を必要とします。

これら神経筋系、筋骨格系という2つのシステムは肩甲上腕関節周辺の結合組織内に存在する固有受容器を通じて機能的に統合されていると考えられます。

これら神経支配下の結合組織は反射弓の一部として機能し、関与する筋に対して迅速で重要な情報を提供しています。

このフィードバック機構は不可欠な動的安定性を提供するだけでなく、意識下レベルにおいてですら関節包内運動を調整するための筋の機能を活性化します。

機能的訓練を通してこのような固有感覚メカニズムへの追求は、肩の不安定性を有する患者のリハビリテーションプログラムの重要な構成要素となっています。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  4. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  5. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-3-23

    感覚としてのカラダ

    感覚器官は外界の情報をキャッチし、逃げる、捕まえるといった生存に必要な動きを能率よく実行するのに役立…
  2. 2017-2-20

    呼吸や腹圧を高める上で欠かせない腹横筋

    腹横筋は腹部の筋肉の中でもっとも深層部にある筋肉で、背中からお腹にかけてコルセットを巻くように横に覆…
  3. 2015-9-30

    神経の可塑性について考える

    神経の可塑性とは、新しい経験を経て、神経細胞の活動が変化し、新たな神経細胞間のネットワークが形成され…
  4. 2015-11-17

    イメージトレーニングによる神経系の適応

    1992年、G. YueとK. J. Coleにより神経系の適応について、非常に興味深い研究結果が報…
  5. 2015-5-25

    水の飲み過ぎによる水中毒とは

    これからの季節、これまでより水分摂取の量が増えてくるかと思いますが、過度の水分摂取には気をつけないと…
ページ上部へ戻る