運動中の換気量増加と酸素負債

運動の開始とともに、換気量は急激に増大します。

中等度の運動では、換気量の増加は主として呼吸が深くなることに由来します。

運動がさらに激しくなると呼吸数も増加します。

運動を停止すると換気量は急激に減少し、次いで短い期間安定に入り、その後徐々に減少して運動前の状態に戻ります。

運動開始時点の換気量の急激な増大は、おそらく精神的刺激と筋肉、腱、関節にある固有受容器からの求心性インパルスによるものであると考えられます。

それに引き続く緩徐な換気量の増大は、おそらく血液成分の変化によるものと推測されますが、中等度の運動では動脈血pH、二酸化炭素分圧、酸素分圧は一定の値を計測します。

運動が激しくなると、産生される乳酸を緩衝する結果としてCO2はより放出され、そのために換気はさらに亢進します。

乳酸産生に伴って、換気とCO2産生は共に増大するため、肺胞CO2および動脈血CO2の変化の程度は比較的小さくなります。

しかし、過呼吸のため肺胞酸素分圧は増加します。

さらに乳酸が蓄積すると、換気の増加はCO2産生を上回るため、肺胞酸素分圧および動脈血酸素分圧は減少します。

この動脈血酸素分圧の減少は、乳酸の増加による代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償となります。

運動により上昇した呼吸数は運動終了後に減少していきますが、酸素負債が返却されるまでは正常のレベルに戻らず、90分も要することがあります。

運動後の呼吸促進の刺激となっているのは、動脈血の二酸化炭素分圧や酸素分圧ではなく、乳酸増加による動脈血のH+上昇となります。

酸素負債を返している間、ATPとクレアチンリン酸は再合成され、乳酸は取り除かれます。

乳酸の80%はグリコーゲンに変換され、20%は代謝されCO2とH20となります。

 

 

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