振動刺激と筋弛緩

痛みや炎症に由来する筋収縮が、関節可動域の制限因子として関与していると考えられる症例に対しては、筋収縮の抑制、つまり筋弛緩を図る、あるいは痛みを取り除くことによって関節可動域制限が改善する可能性は高くなります。

運動療法の1つであるストレッチングは、筋収縮を抑制する目的でも広く臨床で行われており、Ib抑制により筋弛緩が図られます。

一方、物理療法の各ツールでも筋収縮を抑制することは可能であり、これは徒手で行う治療手技とは違い、治療者の技量の影響はあまり受けません。

物理療法の数あるツールのなかでも振動刺激法は、多様な器具が存在し、その使い道も非常に多岐に渡ります。

振動刺激法は、バイブレーターとよばれる器具から発せられる振動を骨格筋に負荷し、筋弛緩を図るものですが、そのメカニズムに関しては全てが解明されているわけではありません。

しかし、近年の研究結果はその効果を支持するものとなっています。

Bongiovanniらは持続的に最大収縮させた前脛骨筋に振動刺激を負荷すると、筋出力とα運動ニューロンの発火頻度が一過性に減少したと報告しています。

また、Desmedtらは、アキレス腱に周波数や振幅を変化させて振動刺激を負荷し、同時にヒラメ筋からH波を導出する実験を行っています。

この結果によれば、振動刺激の周波数が低いほど、または振幅が大きいほど、H波は減少することが示されています。

H波振幅は、脊髄前角細胞の興奮性を表す代表的な指標であり、脊髄前角細胞の興奮性が増すとα運動ニューロンも興奮し、これは筋の持続的収縮の主要因となります。

つまり、低周波かつ大きな振幅の振動刺激は筋収縮の抑制に働くことを示唆しています。

振動刺激によって筋収縮の抑制が図られるメカニズムについてGilliesらとBoveらは、以下のように述べています。

すなわち、骨格筋に負荷された振動刺激は筋長の微小変化という形で筋紡錘に感知され、その情報がIa線維やII線維に伝わり、介在神経を介したシナプス前抑制の発動によってα運動ニューロンの興奮性を抑制するというものです。

つまり、振動刺激によって筋収縮の抑制が働くというメカニズムは、脊髄反射回路の影響が大きく関与していることは間違いありません。

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