脊髄への下行路の遮断と痙縮

筋緊張、つまり筋が伸張に抵抗する力は、筋に内在する弾性もしくは硬さに依存します。

筋には引き伸ばしに抵抗する直列および並列の弾性要素があるため、その作用はバネのようなものになります。

しかし、筋緊張には神経系も関与します。

伸張反射経路に内在するフィードバックループは筋の伸張に抵抗するように働きます。

この伸張反射に関わる局所的神経回路によって、脳は多様な環境に合わせて筋緊張を調整することができるのです。

伸張反射の強度は上位中枢によって制御されるため、筋緊張異常はしばしば運動系、特に下行路の損傷により起こります。

このような状況下では、筋緊張の異常な増加もしくは減少がみられる場合があります。

筋緊張亢進の中で最もよく見られるのは痙縮であり、過度な腱反射と筋の素早い伸張に対する抵抗の増加を特徴とします。

そのため、痙縮を示す患者の筋をゆっくりと引き伸ばしてもほとんど抵抗がありませんが、引き伸ばす速度を大きくしていくと、徐々に抵抗が高まります。

反射的収縮は筋が素早く引き伸ばされている間にしか起こらず、筋が引き伸ばされた状態で保たれると、反射的収縮は消失していきます。

しかし、一部の患者の筋緊張亢進には持続的な要素もあり、筋の引き伸ばしが終わった後まで反射的収縮が続きます。

痙縮の病態生理学は明らかにされておらず、長い間、痙縮における伸張反射の異常亢進はγ運動ニューロンの過剰活動が原因であると考えられてきました。

しかし最近の実験はこの仮説に対して懐疑的であり、一部の例ではγ運動ニューロンや介在ニューロンの活動が異常亢進しているものの、おそらくα運動ニューロンや介在ニューロンの活動の異常のほうがより重要であると考えられています。

痙縮を生む正確なメカニズムが何であれ、その効果は単シナプス性反射経路におけるIa群感覚線維のシナプス伝達の亢進です。

現在の痙縮の治療法は、この点をヒントにしています。

脊髄の硬膜下に薬物を投与してIa群線維終末でのシナプス前抑制を人工的に引き起こす治療が特に欧米では一般的であると考えられています。

この薬物、バクロフェンはIa群線維終末にあるγアミノ酪酸B型受容体の作動薬で、これが受容体に結合するとシナプス前終末へのCa2+の流入が減少し、伝達物質の放出を減少させると言われています。

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