大腿直筋の生理学的作用

大腿直筋は、大腿四頭筋の筋力のわずか1/5しかもちません。

そのため、それ自体のみでは膝関節を完全に伸展することは不可能となります。

しかし、この筋の二関節筋という特性がその特異性を発揮させます。

この筋は股・膝関節の屈伸軸の前方を走っているため、そのまま股関節の屈筋および膝関節の伸筋となります。

しかしその膝関節の伸筋としての効率は、股関節の肢位に左右されますし、反対に股関節屈筋としての効率は膝関節の肢位の影響を受けます。

これは、上前腸骨棘と大腿骨の膝蓋関節面の上縁との距離が、股関節が伸展したときよりも屈曲のときの方が短くなるためです。

この長さの違いが、股関節を屈曲し、下腿の重さによって膝を曲げる際に弛んでいる大腿直筋より、3つの広筋は膝関節を伸展する際、より効率的に働きます。

反対に、股関節が基本肢位より伸展するとしたら、大腿直筋の起始・停止の間の距離は増加し、これは大腿直筋を引き伸ばし、結果としてその効率を増します。

これと同じことが歩行や走行時、後ろ脚が地面を蹴りだす際にみられます。

膝関節と足関節が屈曲している一方で、殿筋が股関節を伸展しているのです。

このようなとき、大腿四頭筋は、大腿直筋の効率が増加しているため、もっとも有効に働くことができます。

したがって、大殿筋は、大腿直筋の拮抗筋でもあり、協同筋でもあるといえます。

すなわち、股関節では拮抗筋、膝関節では協同筋というわけです。

片側下肢が地面を離れ、前方に振り出されたとき、骨盤は対側下肢によって一過性に支持されるので、大腿直筋は股関節の屈曲と膝関節の伸展を同時に生じようとし働きます。

したがって、二関節筋である大腿直筋は歩行の立脚、遊脚の両相、つまり前脚が前方に振りだされるときと、後ろ脚が推進力を提供するときの2相で必要になります。

また、しゃがんでいる状態から立ち上がる際にも、大腿直筋は重要な働きをします。

なぜならこの筋は、大腿四頭筋の中で唯一、全運動を通じてその機械的効率を減少させないからです。

実際には、膝が伸展するとき、大殿筋が働いて股関節が同時に伸展しますが、これが大腿直筋の起始を再度引き伸ばし、この筋の長さを一定に保持するのを助けるためです。

このことからも、股関節にある強力な筋、つまり大殿筋に生じた力がそれより末梢の関節である膝に、二関節筋である大腿直筋の力を介していかに伝達されるかが認識できます。

 

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