皮膚温度の変化の検出と温度受容器

手でもった対象物の大きさや形、テクスチャーは触覚だけでなく視覚によっても感知することが可能ですが、温度に関する性質は体性感覚だけでしか知ることができません。

ヒトには、冷、涼、暖、暑という4つの異なる温度覚があります。

これらの感覚は、外気温あるいは身体と接触している対象物表面の温度と、通常約32℃の皮膚温度との温度差に起因して生じます。

われわれは皮膚温度の急激な変化にきわめて敏感ですが、体から熱を放出したり体熱を保持したりするために行われる皮膚の血管開閉によって生じる皮膚温度の大きな変化には気がつきません。

また、31〜36℃の範囲内で皮膚温度がゆっくり変化する場合も、その変化には気が付きません。

31℃以下の場合、温度低下に伴って生じる感覚は、「涼」から「冷」に移行し、最終的に10〜15℃まで低下すると「痛み」になります。

温度覚は6種の求心性線維の活動が統合された結果生じます。

これは低閾値と高閾値の冷受容器および温受容器と2種類の高温性侵害受容器の計6種となります。

低閾値の冷受容器線維は細く有髄のAδ線維であり、表皮内で無髄の終末となります。

この受容器は皮膚温度の急激な低下に対して感受性が高く、ゆっくりとして変化のおよそ100倍の感度があります。

温度変化に対するこの鋭敏さによって、ヒトは、離れたところにある開いた窓からのすきま風なども検知することができます。

高閾値の冷受容器線維は小さな温度低下に対してはあまり鋭敏ではありませんが、0℃以下における皮膚温度の急激な低下を検出することが可能です。

冷覚のさまざまな性質は、氷の塊を手でつかみ握りこぶしをつくると経験することができます。

そのときの感覚は最初の5秒間を超えると「涼」から「冷」に進行します。

10秒をすぎると次第に痛みが感覚が強くなっていきます。

さらに長く氷を握っていると、感覚は深く痛む性質に変わり出します。

低閾値と高閾値受容器は最初の感覚に強く関係しています。

一方、痛みを伴う冷覚はおそらく静脈中の受容器に起因するものになります。

温受容器は真皮内に終止するC線維の終末に存在しています。

冷受容器と異なり、温受容器は単純な温度計のように振る舞います。

その発火頻度は、皮膚温度が痛みの閾値に達するまでの間は上昇に伴って直線的に増加しますが、さらに高温になると飽和状態になります。

したがって温受容器は熱に伴う痛みを信号として伝える役割を果たすことができません。

また温受容器は冷受容器に比べると皮膚温度の急激な変化をほとんど検出することができません。

つまり、ヒトは温度低下より上昇に対する反応性が低いということです。

皮膚温度の急激な上昇を検出する閾値は、最も感度のよい被験者でも、およそ0.1℃だと言われています。

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  2. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  3. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  4. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…
  5. 2017-7-6

    鼠径部痛と内転筋損傷と恥骨炎

    鼠径部痛はスポーツ選手がよく訴える痛みの1つです。これらの痛みを訴える選手は、内転筋群の過緊…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-3-4

    衛生仮説とは何か

    花粉症というと季節性のアレルギー性鼻炎になるわけですが、近年その発症率は上がってきています。…
  2. 2015-5-20

    紫外線に注意!

    暑さも増し、日焼けをした方もいるかと思います。日焼けは、太陽光のなかで「紫外線によって皮膚が…
  3. 2015-1-30

    トリガーポイントという概念

    日常生活を送っていると、特に何かをしたわけじゃないのに体が痛い、調子がよくない、というようなことがよ…
  4. 2017-1-31

    分厚い胸板をつくるために

    厚い胸板はトレーニングをする人、特に男性には憧れの存在です。ここが薄いとスーツやTシャツもか…
  5. 2015-5-29

    インスリン分泌促進因子インクレチンと肥満の関係

    インクレチンとは消化管ホルモンであるGIPとGLP-1の総称です。これらは食事摂取に伴い効率…
ページ上部へ戻る