「ハムストリングス」と肉離れについて考える

ハムストリングスの肉離れは、スポーツ中に起きる怪我の中でも、特に頻度の高い怪我の一つです。

ハムストリングスの肉離れはほとんどの場合、手術や入院治療の必要はなく、病院外来や現場でのケアが中心となります。

受傷した当日・翌日は、RICE(R=Resting 安静、I=Icing 冷却、C=Compression 圧迫、E=Elevation 挙上)処置を徹底させる必要があります。

基本的には受傷後48時間は徹底してアイシングを行い、浮腫による周囲組織の二次的障害を防止します。

2日目以降は、肉離れの程度やスポーツ種目・レベルに応じてリハビリテーションを行っていきます。

ごく軽症の場合には、2日後からトレーニングを開始して、1〜2週間後で80%以上のスポーツ復帰が可能となりますが、重傷になるほどトレーニングの開始が遅れ、完全復帰には1ヶ月程度から数ヶ月を要する場合もあります。

回復期初期のトレーニングは、安静による筋委縮を最低限に抑え、受傷部の浮腫を軽減させることを目標として、症状の落ち着いているものに関しては、温熱療法やストレッチングを中心に行っていきます。

初期の頃は負荷のない自動運動から開始していき、徐々に運動範囲や抵抗量を増加していき、遠心性収縮の要素も段階的に加えていきます。

ハムストリングスは二関節筋なので、股関節伸展のトレーニングは大殿筋などの補助作用があるため、比較的早期から安全に行うことができます。

膝関節の屈曲角度や股関節の外転・回旋角度などのパターンを組み合わせて、股関節伸展トレーニングを行っていきます。

ストレッチングはまず静的なものが主体となりますが、受傷部の張力を常に考慮しながら慎重に行い、患部に隣接している筋の短縮にも注意を払う必要があります。

患部の収縮痛がなくなってくる回復期後期のトレーニングは、筋力・持久力・協調性の回復を目標として、徐々に患部主体のトレーニングを加えていき、状態を確認しながら負荷も増加させていきます。

肉離れの再発を防ぐこと、患部をかばうことで生じる周辺の筋や関節部の症状にも注意を払うことが大切になります。

スポーツ現場でのトレーニングを行えるまでに回復すると、走力・持久力の回復が目標となり、ランニングが主体のトレーニングとなります。

ジョギングやストレッチング(動的)などウォーミングアップを行い、ゆっくりとした直線走から徐々にスピードを上げ、ステップ・ジャンプ・ターンなどの動作を加えていきます。

ただし、受傷部位に負担のかかるドリルは強度を考え慎重に進める必要があります。

トレーニング中の再発には気を配り、筋に違和感があるときは決して無理をしないようにします。

再発予防のためには、まずどうして肉離れを起こしてしまったのかの検討して、明らかな原因がある場合にはそれに対しての対応を図っていくことが必要です。

また原因の有無にかかわらず、日頃からストレッチングを行うことは再発予防のためにも重要です。

 

再発を防止するトレーニングとしては、ラダーやミニハードルを用いて俊敏に足を動かすトレーニングを行い、肉離れの原因となるランニングフォーム(ストライドの大きさや前傾姿勢など)の点検・修正をするのも有用です。

乳酸系トレーニングが続いた後には、再発の危険性が高くなるので、ストレッチングと並行して交代浴やマッサージなどで、筋の循環を良くして筋が硬化しないようにケアすることも大切です。

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