高齢者の歩行と注意

2つ以上の課題に対して注意を分割する能力は、多くの日常的活動を行っている最中に移動運動を行う場合に重要な能力となります。

たとえば高齢者が、友人を会話しながら道路を横断したり、それと同時に接近してくる車を避けるために両側を見渡しながら横断歩道を渡らなければならないこともあるでしょう。

過去10年間に、移動運動と認知能力を要求される他の課題を同時に遂行する高齢者の能力に注目し、多くの研究が行われてきましたが、これは注意に関する問題が転倒に関与する因子がどうかを知るためのものであったとされています。

注意に関して研究するためには、注意という言葉の定義を行うことが必要になります。

ここでいう注意とは、一人の個人の情報処理過程の許容能力として定義されます。

PCでいうところのメモリ(RAM)といったものでしょう。

この情報処理過程の許容能力に関しては次のような仮説があります。

それによると、いかなる個人にも制限があること、そしていかなる課題を遂行するにもある与えられた許容能力が必要になる、というものです。

したがって、もし2つの課題が同時に実行される場合で、しかもそれぞれの許容能力を加えた以上の許容能力を必要とするならば、いずれかまたは両方のパフォーマンスが低下することになります。

高齢者の許容能力は、歩行と同時に第二の運動課題あるいは認知課題を遂行するときにストレスを受け、歩行や第二課題にある問題が浮かび上がりますが、その理由として「いずれかの課題を遂行するための能力が制限されており、注意がいっそう必要になる」ことと「高齢者の情報処理許容能力の限界で、2つの課題に効率的に注意を分配することが困難になる」ことが挙げられます。

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