中枢神経系と内部モデル

これまでのさまざまな神経活動の研究から、中枢神経系にはさまざまな感覚受容器配列と対応する内的表現、すなわち神経地図があることが知られています。

実験やモデル研究からは、中枢神経系には、運動指令と、運動の結果として予測される感覚シグナルとを関係づけるような内的表現も保持することが強く示唆されています。

例えば、肢の各部位の長さは決まっているため、腕の関節の角度と空間内での手の位置との間には数学的な関係が成立します。

この関係が神経系に表現されていて、関節の角度と腕の各部位の長さがわかっていれば、中枢神経系は手の位置を推定することができます。

そのような感覚運動変換を計算する神経回路は内部モデルの一例です。

こうした神経表現は、実際の関係と厳密には一致しない可能性があります。

なぜなら、構造の違いやパラメータの誤差があるからです。

運動とその結果との因果関係を表す内部モデルは、運動出力に基いて未来の感覚入力を推定することから、順モデルと呼ばれています。

順モデルは、運動指令の結果として運動系の状態がどのように変わるかを予測します。

このとき、下行して感覚運動系に作用する運動指令のコピーが環境の中で動く筋骨格系の神経回路シミュレータとして機能する順モデルへと送られます。

ここで、運動指令のコピーは、中枢神経系から筋に送られる遠心性シグナルのコピーであるため、遠心性コピー、または随伴発射と呼ばれています。

感覚入力から運動出力を計算する内部モデルは逆モデルとして知られます。

そのようなモデルは目標とする感覚を得るための運動を生成するのに必要な運動指令を決定することが出来ます。

順モデルと逆モデルは、直列に並べてみると、よく理解することが出来ます。

各モデルの構造とパラメータの値が正しければ、順モデル(予測された行動)は、逆モデルへの入力(目標運動)と等しくなります。

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-6-15

    腋窩陥凹はハンモックのように

    肩甲上腕関節の関節包靱帯は複雑なコラーゲン線維の交わりあった束から構成され、それぞれ上・中・下の3つ…
  3. 2016-6-20

    大腿骨はどのようにして脛骨上を動くのか

    屈曲・伸展時において大腿骨は、脛骨上を転がり、そして滑ることで、その動きを可能にしています。…
  4. 2016-4-25

    インスリンの過剰と代償機構

    インスリン過剰の結果みられる症状は、直接的であれ間接的であれ、すべて神経系に対する低血糖の効果の現れ…
  5. 2016-4-16

    骨格筋弾性タンパク質であるコネクチン

    現在知られているなかで最も大きなタンパク質であるといわれるコネクチンは横紋筋、すなわちコネクチン、す…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2016-12-15

    筋肉を肥大させるストレス

    私たちの身体が強くなるためにはストレスが必要です。例えば、寒い中薄着で過ごす習慣をおくっていると…
  2. 2017-1-28

    トルクコントロール

    トルクとは、筋肉が関節を回す力のことです。それを最適な状態にするのが「トルクコントロール」で…
  3. 2015-10-7

    グリア細胞について考える

    脳の神経系を組織学的にみると、一定の排列と連結をなすニューロンとその周囲を取り巻くグリア細胞からなり…
  4. 2015-1-24

    高齢者の運動効果

    歳をとってからでも筋肉トレーニングをしたら効果は出るのでしょうか??高齢者でもしっかりと筋ト…
  5. 2015-7-3

    細胞内共生説

    化石から推測すると、約35億年前に原始生物が誕生し、真核生物したのは約10億年前になります。…
ページ上部へ戻る