筋繊維と筋膜の構造と伸張性の比較

【筋繊維の伸張性】
1本の筋繊維を過度に伸張した場合でも、伸張力を除くと筋繊維はもとの長さに戻ることが確認されており、これは筋繊維はクロスブリッジ、筋フィラメント、タイチンで構成されることから力学的モデルにおいては直列弾性要素に区分されます。
クロスブリッジは興奮収縮連関に伴って太い筋フィラメントと細い筋フィラメントの間で形成されますが、この状態では筋収縮が発生しているため筋繊維を伸張することは困難です。
つまり、この場合はクロスブリッジと筋フィラメントが力学的モデルの収縮要素として働いており、筋繊維、ひいては骨格筋全体の伸張性は低下することになります。
ただし、この変化に基づく関節可動域制限は筋性拘縮の範疇に含まれないことに注意すべきです。
一方、筋収縮が起きていない静止状態における筋繊維の伸張性は、タイチンに由来するところが大きく、もし筋繊維の伸張性低下が筋性拘縮の病態に関与すれば、その原因はタイチンにあると推測されます。

【筋膜の伸張性】
筋膜は並列弾性要素に区分され、特に筋収縮が起きていない静止状態における骨格筋の伸張性に関与しています。
筋膜には、①骨格筋の最外層で筋全体を覆う筋上膜、②骨格筋の内部で束ねられた筋繊維を覆う筋周膜、③個々の筋繊維を包み込む筋内膜の3種類があり、これらは骨格筋内に存在する結合組織成分で、細胞と細胞外の繊維ならびに粘性に富んだ半流動状態の基質によって構成されています。
結合組織内に存在する細胞には、コラーゲンやエラスチンなどの合成を担う固有の繊維芽細胞のほか、脂肪細胞や肥満細胞、マクロファージなどがあります。
また、細胞外の繊維にはコラーゲン繊維とエラスチン繊維があり、細胞や細胞外の繊維が存在する基質は、水分のほかにグリコサミノグリカンやプロテオグリカンがあります。
このように筋膜は数多くの構成成分を有していますが、そのなかで最も主要なものはコラーゲン繊維であり、筋膜の伸張性の制御機構と深く関わっています。
骨格筋の種類によって受動張力が異なることが知られていますが、これには骨格筋内のコラーゲン含有量の違いが影響しており、伸張性に乏しい骨格筋ほどコラーゲン含有量が多いことが明らかになっています。
加えて、生体内にはアイソフォームが異なる数十種類のコラーゲンタイプが存在し、筋膜においては硬度が要求される組織で含有率が高いタイプⅠコラーゲンと伸張性や柔軟性が要求される組織で含有量が高いタイプⅢコラーゲンが主です。
そして、このタイプⅠ・Ⅲコラーゲンの組織含有比率は筋膜の種類によって異なることも明らかになっており、筋上膜と筋周膜はタイプⅠコラーゲンの含有比率が高いのに対し、筋内膜はタイプⅢコラーゲンの含有比率が高いとされています。
つまり、筋繊維を直接包み込んでいる筋内膜は、筋繊維の収縮・弛緩、あるいは伸張に伴う筋繊維の長さ変化に直接対応することが求められるため、コラーゲンタイプの組織含有比率においても筋上膜や筋周膜よりも伸張性や柔軟性に富んだ構成になっています。
さらに、コラーゲン繊維そのものには伸張性はなく、網目状の繊維網を形成することが明らかになっています。すなわち、筋内膜における個々のコラーゲン繊維には十分な可能性があり、骨格筋が弛緩しているときはさまざまな方向に配列していますが、伸張するとその配列は伸張された方向にほぼ平行になります。
つまり、骨格筋の弛緩・伸張に伴って筋内膜を構成するコラーゲン繊維には配列変化が生じ、筋内膜の伸張性が発揮されます。

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