持続的な伸張に対する筋の適応

伸張は筋に対して大きな適応を起こす手段のひとつです。

その伸張を持続的、慢性的に起こすと果たして筋にはどういった反応が現れるでしょうか。

持続的な伸張に関する実験が、イギリスの筋細胞生物学者であるPamella WilliamsとGeoffrey Goldspink(1971, 1973)によって行われました。

Williamsらはマウスのヒラメ筋を伸張させるために足関節完全背屈位で固定し、筋の長さに沿って直列に連なるサルコメア数に生じる変化を測定しました。

結果は、4週間の固定によって、伸張されたヒラメ筋の静止時のサルコメア長が、伸張されていない通常のヒラメ筋のものとほぼ等しいものの、サルコメア数が20%増加しました。

このとき、まず足関節を背屈することによってヒラメ筋の筋腱複合体は二次的に伸張され、それによってサルコメアの長さが増加し、次にその筋は長さの増大を感じ取り、通常のサルコメア長に戻るために新しいサルコメアを合成したと考えられます。

同様の実験において、研究者らは足関節を完全に底屈した状態、すなわちヒラメ筋は短縮させた状態で不動化しました。

すると4週間後にはサルコメア数はおよそ40%減少しました。

その際、不動化した筋の長さ−張力関係を測ったところ、筋は固定された長さとほぼ近い長さでその筋の最大張力を発揮することが分かりました。

それを受けた研究者らの解釈は、筋は不動化された長さに適合するようにリセットされサルコメア数を調整するというものでした。

Williamsらはまた、神経を実験前に切断しても同一の結果が得られたことから、神経がない状態でもこれらの過程が生じることを示しました。

これは、適応過程のための中枢は筋自体に存在するということを示すものとなりました。

 

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-6-15

    腋窩陥凹はハンモックのように

    肩甲上腕関節の関節包靱帯は複雑なコラーゲン線維の交わりあった束から構成され、それぞれ上・中・下の3つ…
  3. 2017-1-18

    筋力トレーニングの負荷設定について

    筋力トレーニングを行うに当たっては、目的を明確にし、その目的に応じたトレーニング条件を設定することが…
  4. 2016-12-1

    骨の連結

    骨の連結には骨と骨が線維性の結合組織によって結合される線維性の連結と、骨と骨が軟骨線維によって結合さ…
  5. 2016-9-4

    反射神経とは

    競技によっても様々ですが、アスリートたちの反応の速い動きをみてると驚かされるばかりです。…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-2-23

    「不定愁訴」に気をつけましょう。

    現代では、「身体がだるい」、「頭が重い」、「イライラする」、「疲労感が取れない」など、「なんとなく体…
  2. 2015-9-11

    顎関節ストレスと姿勢

    筋解剖学に基づくと、頭部の位置が下顎の安静位置に影響を及ぼすと考えることは容易なものです。た…
  3. 2015-4-25

    食事と咀嚼

    食べるということは、生きるため健康のためにはとても重要な事になります。食べるときは、歯だけで…
  4. 2015-6-24

    膝関節の機能解剖

    膝関節は大きな可動性を有した関節形状をしていて、特に矢状面上での可動域が大きい関節になります。矢…
  5. 2015-4-15

    間脳の解剖 後編

    トルコ鞍という蝶形骨と後頭骨が縫合してできた骨の土台には下垂体が位置します。下垂体は他のさま…
ページ上部へ戻る