運動と筋の協調

規定の起動を達成するため、神経系は要求された変位を生み出す筋のみではなく、意図しない動きを邪魔する筋も活性化させる必要があります。

例えば肘の屈筋は、肘関節を中心に前腕を素早く回転させるために用いられます。

このとき手首をまたぐ筋が手関節を固定するため同時に活性化されなかったとすると、前腕の回転により手は手関節で振り回されることになります。

最も単純な場合、筋は単一の関節をまたぎ、付着する身体部位を単一軸を軸として回転させます。

筋は引っ張る力しか発生しないため、単一の軸回りの動きには少なくとも2つ、もしくは2群の力を必要とします。

したがって、膝関節周りの屈曲ー伸展運動には、屈曲方向の力を発生させるために膝関節、伸展方向の力のために大腿四頭筋が関与します。

しかし、多くの筋は骨格に対し中心を少し外れて付着しており、1つ以上の軸回りの回転を引き起こします。

そのうち1つの動きが不要だとすると、神経系は他の筋を活動させ、望まない動きを抑制しなければなりません。

例えば橈側手根屈筋を活動させると、手首は屈曲かつ外転します。

意図した動きが単に手首の屈曲であれば、手首を屈曲かつ内転させる尺側屈筋のような他の筋を活動させることにより、外転運動は妨害されなければなりません。

関節表面の形状と筋の付着部位により、1つの関節をまたぐ複数の筋は、1〜3軸の回転運動を引き起こすことができます。

さらに、いくつかの構造は直線的に移動でき、関節の自由度を増やします。

この構造は骨格運動系の柔軟性を増加させ、異なる組み合わせの筋を活動させて同じ運動を行うことを可能にします。

しかし、この付加的な柔軟性は、制御しなければならない不必要な運動が多様になる代償を伴います。

解決法として、神経系はある運動を行うために選択した筋間の関係を組織化しています。

時間とともに変化する複数の筋活動が独特のバランスをもつことを筋シナジーとよび、運動はこれらシナジーを協調して活動させることにより引き起こされます。

例えば筋電図記録にとり、手の物体把握、さまざまな方向に手を伸ばすことや指差し運動、異なる速度での歩行やランニング、といったさまざまなヒトの運動が、約5個の筋シナジーにより制御されていることが示唆されました。

 

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