不快感という身体のシグナル

医学や薬がなくても、脊椎動物は何億年もウイルスと共存してきました。

ヒトもチンパンジーも、500万年前に2つの種に分かれてからずっと、さまざまなウイルスや細菌の感染を受けながらも絶滅せずに今日に至っているのは、ウイルスや細菌感染に対抗する仕組みを進化させてきたからです。

1万年前、急速に人口が増え始めたころ、我々の先祖は医者も薬も持ってはいませんでした。

それにも関わらず人口は増え続けました。

もちろん、1918年から世界的に流行し、5000万人もの死者を出したスペイン風邪や、1957年のアジア風邪、1968年の香港風邪など、全世界では100万人規模の犠牲者がでるインフルエンザなどの感染症の大流行がくり返し起こっています。

14世紀のヨーロッパでは人口の3〜4割が感染して死亡したという黒死病という伝染病があったと伝えられていますが、それでもなおヒトという種は滅びていません。

逆にいうと、繰り返し起こった世界的な感染症の流行を乗り越えて生き残ってきたヒトの子孫である我々は、感染症に対する強い抵抗性を持っているとも考えられます。

つまり、病原生物との戦いに生き残る性質を持っていることで選択されたのが、今生きている我々ということになります。

ヒトは、ウイルスや細菌の感染に対抗するための非常によくできた免疫システムを進化させてきました。

発熱は体内にウイルスや細菌が進入しているという警報であるとともに、ウイルスの増殖を抑制し、免疫系の細胞を活性化する働きをもちます。

発熱による倦怠感は、休息を取りなさいという身体からの指令なのです。

さらに、吐き気は消化管内に毒物があることの警報であると同時に、嘔吐や下痢によって体内の毒物を追いだそうとする反応を誘発します。咳やくしゃみも喉や花から異物を追いだそうとする反応です。

もちろん、発熱や倦怠感、嘔吐や咳、くしゃみを不快と感じる人は多いでしょう。

しかし、これらの不快感は身体はウイルスや細菌に正常に反応して、身体を元の状態に戻そうとしていることを示しているのです。

つまり、この不快感に身を任せることが病気からの自然治癒を促すことになります。

したがって不快感は、ヒトがウイルスや細菌といった外敵に囲まれながらも、その感染を感知し、正常に反応し、効果的に対抗して健康に生きていることを示すバロメーターだと考えられます。

 

 

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