筋の時間的加重とは

筋の活動は収縮と弛緩によって完結されます。

それは活動電位による筋細胞の興奮によってもたらされるものであり、この一連の流れを興奮収縮連関といいます。

この興奮収縮連関の連鎖の理解は、後述する時間的加重や、筋収縮の性質の理解の上で欠かせません。

興奮収縮連関にはある時間的特徴が存在します。

それは活性化や収縮および弛緩に要する時間が明らかに限定されているという点です。

すなわち、興奮(Ca2+の放出を伴う)は約5msecと比較的速いですが、収縮と弛緩は約100msecと興奮に比べてかなり遅く発生します。

活性化の結果によって起こる力学的な反応(単収縮)は、活性化自体の過程からははるかに遅れて発生することを示しています。

複数の筋活動電位の力学的な影響を考えるために、興奮収縮連関のすべての過程が1回終了するのに100msecを要すると仮定します。

最初の活動電位の後、100msec以内に次の活動電位が伝達されると、筋は完全に弛緩する前に収縮するシグナルを受け取ることになります。

言い換えると、2番目の活動電位は、最初の活動電位によって引き起こされた収縮周期の一部に重ねられ、2つの活動電位の間隔によりさまざまな程度の収縮の加重が起こります。

このように2つの出来事が相対的な時間関係に基いて加重されることから、この加重の過程は時間的加重と言われます。

時間的加重の機能的効果は活動電位の数と時間的な近接度に依存します。

全体でみると、複数の活動電位は単発の活動電位よりも大きな収縮力を生じることになります。

このことは、最初の活動電位とそれに続く活動電位とでは筋の力学的な状態が異なることに原因の一部があることを示しています。

最初の刺激はサルコメアを収縮させ、サルコメアと直列に配置される腱などの受動的構造物を伸長しきった状態にします。

そこに2番目の活動電位がくると、それらの受動的構造を引き伸ばす必要がなく、すべてのクロスブリッジ相互作用による張力は既に固くなった直列弾性要素を介して伝達され、筋線維の両端で発揮される力はより大きくなります。

このようにして、約50msec間隔の2つの活動電位は、もっと長い間隔の2つの活動電位よりも大きな収縮を引き起こすことになります。

もし、そのような活動電位が連続して筋を刺激すると、それは強縮として知られる収縮反応が引き起こされ、張力発生は単収縮とは全く違ったものになります。

基本的には、筋は刺激頻度が高いとより大きな収縮反応が引き起こされます。

これは高頻度では弛緩相の時間が短くなるためです。

低頻度の刺激では、引き続き刺激がきてもほとんど弛緩状態であり、この場合、ひとつひとつの収縮反応が区別して観察されるので、加重されていない強縮として考えられます。

 

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