アルコールとタバコ依存

糖や脂肪のようにエネルギー源になるわけでもないのに、ヒトがついついはまってしまう嗜好品というものがあります。

その代表的なものが、アルコールとタバコです。

アルコールは高エネルギー源ですが、そのエネルギーを糖や脂質に変えて蓄積することはほとんどできません。

つまり、生命維持にむいた栄養素とは言えませんが、依存症になりアルコールを手放すことができなくなる人が世界中にたくさんいるのは何故でしょうか。

多くの動物がアルコールに嗜好性を持つことが知られています。

アルコールは糖が発酵して造られるもので、揮発性があり匂いがすみやかに拡散するため、アルコールの匂いは糖の存在を示すことになります。

動物にとって糖は生きるために必須なものなので、糖があるところを発見する能力としてアルコールに対する嗜好性が進化したと考えられます。

恐らくヒトの祖先も果物などを発見するためにアルコールの匂いを利用していたと考えられるため、それに対する嗜好性はもともとあったと思われます。

加えて、アルコールには直接脳に作用して神経細胞の働きを抑え、大脳皮質の活動を低下させる作用があり、解放感やストレスの解消感が得られます。

そのような薬理作用が、依存を生み出す一因になったのであろうと考えられます。

もちろん過度の依存症は例外的な精神疾患と考えられますが、多くのヒトがアルコールを好むのはけっして病気ではなく、ヒトという動物の性質のひとつであると言えます。

タバコもアルコールと同じように、あるいはそれ以上に習慣性の強い嗜好品です。

最近では、タバコが肺ガンをはじめとする呼吸器疾患のみならず、動脈硬化や脳梗塞などの循環器疾患などさまざまな病気の主要因および悪化要因となることが医学的に証明されているのにも関わらず、やめられないヒトも多くいます。

これに関して、ある研究では、肺ガンになる確率を上げるCHRNAという遺伝子の変異が喫煙依存症に関係しているという報告がなされています。

両親から受け継いだ2本の染色体のうち、どちらかにでも変異があるとそうでない人より30%も肺ガンになる確率が上がり、両方あると70%高くなるというものです。

肺の細胞がCHRNA遺伝子が作り出すCHRNAという名前のタンパク質をもっていると、肺の細胞がタバコのニコチンを受け取ったときに活発に増殖して、ガンになりやすくなるということが示唆されています。

また喫煙者の中でも1日10本以上吸う人と全く吸わない非喫煙者においてこの遺伝子の変異を持つ例が多いことが分かりました。

この結果は、この遺伝子変異をもっているヒトが喫煙を始めるとヘビースモーカーになりやすいことを示唆していることを示すと解釈されています。

依存症は精神疾患に分類される病気ですが、それをそうさせる生物学的な原因があることは間違いのないことなのかもしれません。

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