身体活動は運動単位の性質を変えうる

習慣的な身体活動レベルの変化は、運動単位の収縮の3つの性質、すなわち収縮速度、最大張力、疲労性に影響し得ます。

加齢や寝たきり、四肢の不動化、宇宙飛行などの筋活動の減少は、3つすべての最大能力を減少させます。

身体活動の増加の効果は、活動の強度と期間に依存します。

強い収縮を短時間行う運動を1週間に数回行うことは、収縮速度と運動単位の張力を増加させます。

一方、弱い収縮を長時間行うことは、運動単位の疲労性を減少させうると考えられます。

運動単位の収縮の性質が変化すると、筋線維の構造的特殊化と生化学的性質の適応がもたらされます。

例えば、筋力トレーニングによる収縮速度の向上は、筋線維の最大短縮速度の増加をもたらしますが、これは線維中のミオシン分子の機能の向上によるものだとされています。

同様に、最大張力の向上は、筋線維の径や固有の張力発揮能力の増加をもたらしますが、これは収縮タンパク質の数と密度の増加により引き起こされます。

対照的に、筋線維の疲労性の変化は、毛細血管の密度、ミトコンドリア数、興奮収縮連関、代謝能力のような、多様な要因の適応によってもたらされます。

持久性トレーニングは、ミトコンドリアの産生を促し、筋線維の酸化能力を増大させ、したがって疲労性を減少させます。

この筋線維の適応能力は加齢により減少しますが、筋は90歳でもトレーニングに対する反応を有しています。

筋力トレーニングと持久性トレーニングは筋線維の収縮性能に影響しますが、筋線維の構成を変える効果はありません。

数週間の運動はIIa型とIIx型線維の比率を変えますが、I型線維の比率に変化は生じません。

すべての型の筋線維はトレーニングに反応して適応しますが、その程度はトレーニングにより異なります。

例えば、2〜3ヶ月の下肢の筋力トレーニングは、I型線維の横断面の面積を0〜20%、II型線維で20〜60%増加させ、IIa型線維の比率を約10%増加、その分IIx型線維の比率を減少させます。

さらに持久性トレーニングは、筋線維の型の比率を変えることなしに酸化代謝経路の酵素活性を上昇させますが、トレーニング期間に応じてIIa型線維とIIx型線維の相対的比率は変化します。

逆に、数週間の寝たきり状態や四肢の不動化は、筋線維の比率を変えませんが、線維の太さや固有の張力発揮能力を減少させます。

身体活動は筋のI型線維の比率にほとんど影響を与えませんが、相当な介入は効果を与えます。

例えば、宇宙飛行士は、持続的に筋への重力の影響を減少させ、下肢のI型線維の比率を減少させます。

また、数週間、低頻度で持続的に電気刺激を与えると、I型線維の比率が著しく増加し、線維の太さは顕著に減少します。

同様に、外科的に筋の神経支配を変化させると、筋の活動パターンが変化し、次第に移植した神経がもともと支配していた筋と同様の性質を示すようになります。

下肢の速収縮性の筋を支配していた神経を、例えば遅収縮性の筋につなぐと、遅筋はより速筋のようになります。

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-8-11

    アフォーダンスとカノニカルニューロン

    随意的な動作は、中枢で生じた運動の意図が顕在化したものであり、「目的」はそれを達成するための筋道を決…
  4. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  5. 2017-7-18

    クレンチング(食いしばり)と運動の関係

    クレンチングとは、無意識的に上下の歯を強く噛みしめる動作をいいます。習慣化されたものはブラキ…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-6-8

    内側運動制御系と外側運動制御系

    運動は、体幹や四肢の近位筋による歩行や姿勢制御と、手指の遠位筋を用いる精緻運動とに大別されます。…
  2. 2015-7-4

    免疫システムの防衛基地「リンパ節」とT細胞

    T細胞がリンパ節の中で病原体をみつけだして活性化すると、T細胞はパトロール経路を修正する。このパ…
  3. 2015-11-7

    ミネラルの正体

    ミネラルというとイコール塩分といったイメージがありますが、実はそうではありません。普段、ミネ…
  4. 2016-12-10

    トレーニングを行うときの3つの筋反射

    身体の可動域をあげる為などトレーニングをする時に起こりえる筋反射が3つあります。それは、「伸…
  5. 2015-5-19

    血液脳関門と脳の栄養

    脳の血管には「血液脳関門」といわれる構造があり、血中のタンパク質やその他の物質が脳の中に侵入できない…
ページ上部へ戻る