シナプス可塑性の基礎には伝達物質放出の変化がある。

化学シナプスの伝達効率は短期的にも長期的にも調節を受け、変化し得ます。

この性質をシナプス可塑性といいます。

こうした機能調節は内因性シグナルによって生じる場合もあれば、外因性シグナルによって起こることもあります。

内因性シグナルの例としては、高頻度の発火があり、外因性シグナルには、他の神経細胞からの直接的なシナプス入力や神経調節物質の広範な作用などがあります。

シナプス強度は、伝達物質の放出の変化によってシナプス前性に調節されることも、その両方の調節を受けることもあります。

シナプス前性および後性の調節による長期変化は発達と学習に不可欠なものです。

このシナプス強度の変化に伝達物質放出量の変化が関わっていると考えられています。

伝達物質放出量の変化は劇的かつ非常に速やかで、ほんの数秒間でも数倍になり、その変化が数秒間、数時間、あるいは数日間も持続します。

変化は原則として2種類の機序で起こります。

1つはCa2+流入の変化であり、もう1つはCa2+濃度上昇に応答して放出される伝達物質量の変化です。

シナプス強度は、通常、強い神経活動によって強化されます。

多くの神経細胞で、高頻度の活動電位が持続したあとには、一定の期間、単発の活動電位がより大きなシナプス後電位を引き起こすことが明らかにされています。

シナプス前細胞の高頻度刺激は、一部の神経細胞では1秒間に500〜1000発の活動電位を発生させることができ、強縮性刺激(tetanic stimulation)と呼びます。

強縮性刺激中のEPSP(興奮性シナプス後電位)の増大を増強(potentation)と呼び、強縮性刺激後に持続するEPSPの増大を反復刺激後増強(post tetaicpotentation)と呼びます。

このような強化の持続時間は、通常は数分間ですが、一部のシナプスでは1時間以上持続することもあります。

高頻度刺激がもっと長時間続くときには、逆にシナプス後電位は小さくなります。

この効果をシナプス抑圧(synaptic depression)と呼びます。

伝達物質放出は、細胞内Ca2+濃度に強く放出するので、シナプス前終末の遊離Ca2+濃度に影響を及ぼす機構は、伝達物質放出量も変化します。

通常、単発活動電位に応答したシナプス前終末のCa2+濃度の上昇は、細胞内Ca2+結合タンパク質やミトコンドリアによって速やかに緩衝されます。

Ca2+はまた、Ca2+ポンプやCa2+輸送体によって能動的に細胞外へ汲み出されます。

しかし、強縮性刺激中には、大量のCa2+が軸索終末に流入するため、Ca2+緩衝系やクリアランス系が飽和してしまいます。

その結果、残存Ca2+と呼ばれる過剰なCa2+が細胞内に一時的に留まります。

残存する遊離Ca2+は、静止時のCa2+レベルよりわずかに高いCa2+濃度に感受性のある酵素を活性化することにより、シナプス伝達を何分間にもわたって強化します。

このようなCa2+依存性酵素経路の活性化は、シナプス前終末でのシナプス小胞のプライミングを増加させると考えられています。

これは最も単純な細胞記憶であると考えられます。

シナプス前細胞は、その活動についての情報を、神経終末の残存Ca2+という形で蓄えるためです。

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