音楽の嗜好性

人はそれぞれさまざまな好みをもちます。

音楽も例外ではありません。

一口に音楽の好みといっても、ロックが好きな人、クラシックが好きな人、演歌の好きな人などさまざまな人がいますし、もちろん音楽に全く興味のない人もいます。

イギリスの神経内科医オリヴァー・サックスの著書『音楽嗜好症』では、側頭葉腫瘍の手術後に音楽好きになった女性や、側頭葉てんかんの薬を内服し始めたら急に音楽が好きになった症例などが紹介されています。

側頭葉には聴覚の中枢がありますが、言語は左半球の側頭葉を中心に、音楽は右半球優位に処理されていると言われています。

ただ、言語や音楽は複雑な処理をされているため、その人が右利きか左利きか、また男か女か、どういった言語環境・音楽環境にあったかで相当のバリエーションがあり、一概には比較検討できません。

とくに音楽に関しては、前述したようにはっきりとした中枢はありません。

側頭葉の病気が原因で失音楽症になった症例については1800年代から報告されています。

側頭葉のてんかん発作では音楽などの幻聴も伴うことが知られています。

ウィリアムス症候群という7番目の染色体の一部が欠損した症候群がありますが、この病気の人は全般的な知能は低下しますが、言語や音楽の能力はむしろ優れることが知られています。

例えば、象について、絵を描くと子どもが描くような絵しか描けませんが、言葉での描写は「長い灰色の耳をもち、うちわにように風を送ることができる」と叙情的で、作曲などにも才能をみせるといいます。

ウィリアムス症候群の95%は聴覚過敏といって正常な人には苦痛でないレベルの音量でも不快に感じてしまう症状があり、彼らの音楽的言語的才能と聴覚過敏は遺伝子の働きによるもののようです。

言語に関しては、誰でも日常的に訓練しているので、読んだり考えたりすると同時に頭のなかでも発声が自然に湧くことが多いですが、音楽については既知の音楽をイメージすることはできても未知のイメージが湧いたり楽譜を読んだだけで頭に音楽がなってくる人は多くありません。

しかし、音楽家の中には、言語と同程度かそれ以上に頭の中で音楽を操ることができる人々がおり、そういった人の脳の活性を調べた報告では、実際の演奏の時と演奏を想像する時と、全く同じ脳の領域が活性化していました。

音楽が好きな人は数多くいますが、どのような音楽を好むかというのは千差万別です。

果たして全ての人が好むような音色があるのかどうかを調べた実験がありますが、その結果、全ての人が好む音色というものはないということがわかりました。

西洋音楽の和音には周波数的に調和が取れているから好む人が多いのだという説もありますが、協和音と不協和音の判断には文化的基準や個人差もあり、絶対的とはいえません。

また、音楽には数学的な真理が含まれており、紛れも無い法則性が存在します。

西洋音楽では数学的真理を重視して、音階が定められているため、特にそう感じやすいと言われています。

音符を読んで、それを音楽に再現するという能力は、ある意味特殊な言語を操る能力と言えるかもしれません。

さらに音楽家の脳では左右の脳をつなぐ脳梁が太い、側頭葉が肥大している、小脳が大きいなどといった報告もあります。

したがって、音楽の訓練を受けることで、脳全体の活性化に繋がるのではないかと言われています。

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