大脳基底核の3つの回路と歩行

大脳皮質運動野から基底核に送られる情報は、基底核内部の回路で処理され、基底核出力核から視床あるいは脳幹に伝えられます。

基底核内部回路は、

①運動野-視床下核-基底核出力核からなるハイパー直接路(hyper direct pathway)

②運動野-被殻-基底核出力核からなる直接路(direct pathway)

③運動野-被殻-淡蒼球外節-視床下核-基底核出力核からなる間接路(indirect pathway)

の3つのサブ回路で構成されます。

いずれの回路で処理された情報も基底核出力核(淡蒼球内節と黒質網様部)で集約されることになります。

基底核出力核は視床にGABA作動性の強い抑制性出力を送ります。

視床から運動野への出力は興奮性であるため、基底核からの出力の増大は運動野の機能を抑制することになります。

こうして、大脳皮質運動野から始まったり、基底核、視床を経て運動野に戻る再回帰的回路が形成されます。

また脳幹のPPNは視床と同様に基底核出力核から抑制性の投射を受けます。

黒質緻密部から被殻へのドーパミン作動性投射は、D1受容体をもつ直接路の線条体中型有棘細胞に対して促進的に、D2受容体をもつ間接路の線条体中型有棘細胞に対して抑制的に作用します。

直接路の促進と間接路の抑制は、最終的に基底核出力を抑制することになるため、ドーパミンの放出は視床-運動野回路ならびに脳幹PPNの活動を促進する方向に導きます。

大脳皮質運動野に電気刺激に与え基底核から記録を行った一連の実験によれば、運動野の活動はハイパー直接路、直接路、間接路の順で基底核回路の活動を引き起こします。

運動野の活動は大脳基底核への投射を介して、まず自ら(運動野)の活動を抑制し、次に興奮または脱抑制させ、最後に再び抑制します。

運動野の活動が、基底核回路を介して自らの活動を抑制あるいは興奮させるモデルはダイナミックモデルと呼ばれています。

運動野の活動が時間遅れを伴って、運動野自らの活動に影響を与えるこのモデルは歩行・走行に限らず運動の神経制御全体を考えるうえで重要です。

これら運動野と基底核が構成する複数の遅延回路の役割としては、目的にかなう運動を選択する一方、不要な行動を抑制することに役立つと考えられています。

すなわち、歩行運動の場合、基底核回路は必要なタイミングで必要な運動要素の実行を促進するとともに、必要のない運動要素が出現してしまうことを防ぐために働くと考えられます。

さらにまた、基底核回路は発達段階における歩行運動の学習に大きな役割を果たす可能性があります。

ヒトの直立歩行における基底核の役割については、断片的な情報をつなぎ合わせて推測している段階です。

ヒトにおいても四足歩行動物と同様の脳幹歩行中枢が存在することは、霊長類の生理学的実験や、ヒトの損傷研究・イメージング研究から支持されており、大脳基底核はヒト二足歩行制御においても歩行実行系を調節する役割を果たしている可能性が高いといわれています。

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