動物の発達と歩行

脊椎動物の進化は脳の発達と並行してみることができます。

水中や最初に重力下での地上生活を開始した我々の祖先の脳は、主に脳幹や脊髄、そして辺縁系などを主体としていました。

その後、哺乳類で大脳皮質の形成が明確になり、ヒトや霊長類では深い脳溝を有する大脳皮質が高度に発達しました。

この脳の発達は、動物の移動行動すなわち歩行運動様式の変遷とも関連してみることが可能です。

地上生活する進化の上で比較的古い脊椎動物の多くは、その形態的特徴を反映し腹部を地面に接触または近接させ、体幹をくねらせるような四足歩行を行います。

その後の進化は強力な抗重力筋の発達にみることができます。

そのため、ネコやイヌなどの四足歩行動物では、重心位置が高位になったにもかかわらず、安定した起立姿勢を維持し、歩行のみならず走行さえも可能になります。

そしてヒトではより高位にある重心位置を維持しつつ、二足歩行・走行を行うことが可能となりました。

ヒトにみられる胸椎後弯や腰椎前弯などの特徴的骨格の獲得は二足歩行・走行の実現に大きく貢献しているが、そのほかにも動物の脳の形態とその歩容を対比させてみると、大脳皮質の発現やその高度化も二足歩行の獲得に寄与しているようにみえます。

四足歩行動物の多くは、出生直後から自力で立ち上がることができます。

これは外敵からの逃避や食餌の探索のためであると考えられます。

すなわち、四足歩行動物の多くは出生直後直ちに立ち歩くことを可能にする神経制御機序、そして筋骨格系を有していると考えられます。

一方で、ヒト新生児では自身で立てないばかり、首さえ据わっていない状態で出生します。

ヒト乳児が自ら立ち上がるのは一般的に生後1年位の時期であり、この間に出生時約350gの脳重量が約3倍に増加します。

そして成人型の二足歩行を獲得するのは出生後約3年の歲月が必要であり、その時の脳重量は成人の約90%に達しています。

この過程で、抗重力筋は吻尾側方向に成熟し、乳児は首が据わり、頭部を床から挙上させ、腕や手を使って体を床に擦るようなズリ這い(hau-ling)、膝這い(creeping)つかまり立ち、そして二足歩行を順に発現します。

Garwiczらは24種の哺乳類の成体脳重量とそれぞれの動物の歩行開始時期との相関を解析しました。

その結果、成体脳重量と正の相関を示したのは、「出生」からではなく、妊娠(受精)から歩行開始までの期間であることが分かりました。

この研究結果は運動の発達メカニズムは出生後に生じるというより、出生前からの連続性の中で構成されている可能性があることを示唆しています。

ヒトの生後の歩行能力過程と照らしてみると、出生前の脳内では歩行に必要な基本的神経機構とそれらのによる初期的ネットワークが一定程度形成され、出生後のそれらの段階的な発達と抗重力筋の機能発現を可能にさせると考えることができます。

ヒトの胎児の大脳皮質の形成は受精後6週で始まり、20週頃には脳溝の形成、そしてその後爆発的な皮質領域の拡大が観察されます。

同時にこのころから脳幹重量の全脳重量に対する割合は減少する。これらから大脳皮質の発達は、胎児期から極めて旺盛であることが理解できます。

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