「鍵つまみ」における筋の生体力学

母指と示指側面とのあいだで物体をつまむことは重要な把握機能になります。

この動作はよく「鍵つまみ」と呼ばれます。

効果的な鍵つまみを行うには、とくに第1背側骨間筋に大きな力が要求されます。

第1背側骨間筋は母指の筋群により生じる非常に強い屈曲力を打ち消すために、示指のMP関節で強い外転力を発生しなければなりません。

これら対立する筋力が示指と母指間のつまみ力を生じます。

母指の運動で最も強い屈曲は、主に母指内転筋と長母指伸筋そして母指球内の筋群によります。

示指MP関節を安定させるための第1背側骨間筋の内的モーメントアームは約1cmであるのに対し、示指MP関節に対する母指のつまむ力は約5cmの外的モーメントアームで作用します。

MP関節を通るてこの長さに5倍の差があるために、第1背側骨間筋は母指に対して5倍のつまむ力を発揮する必要がありますが、多くの機能的活動は45Nを超える力が要求されるので、第1背側骨間筋は最低でも225Nの力を発揮する必要があります。

しかし、骨格筋は断面積1c㎡あたり28Nの力を発揮しますが、第1背側骨間筋の平均横断面積は約3.8c㎡であるため、わずか106Nの力しか発生できないことになります。

そのため、最大の鍵つまみには、示指を安定させる第1背側骨間筋に追加の力が必要になります。

それには第2背側骨間筋や示指と中指の橈側虫様筋が関与していると思われます。

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