中枢性疲労とその仮説

最大限の運動能力を発揮する上で疲労は邪魔なものです。

肉体的な限界に至る前に感じられる疲労、すなわち中枢性疲労は運動を遂行する動機に影響を与えます。

これまで中枢性疲労の発生機構としていくつかの仮説が提唱されてきました。

まず最も有名なのがセロトニン仮説です。

セロトニンは消化管に多く存在しますが、神経伝達物質としても働き、脳のセロトニン作動性神経は多くの重要な機能を担うことが知られています。

セロトニンはアミノ酸の一種のトリプトファンがその前駆物質です。

脳でのセロトニン合成の律速段階はトリプトファンの供給にあります。

トリプトファンは血中で血清アルブミンと結合して運搬されます、

脂肪酸も血中ではアルブミンによって輸送されますが、長時間の運動により血中脂肪酸濃度が増大すると脂肪酸の結合量が増大し、結果としてトリプトファンが追い出され、血中に遊離のトリプトファンが増大します。

血中の遊離トリプトファン濃度が増大し、かつ同様の運動でエネルギー源となる分岐鎖アミノ酸濃度が減少して脳への流入に適した条件が揃うと脳のセロトニン合成が上昇し、セロトニン作動性神経の活性が増大し、それが疲労感を引き起こすとするのがセロトニン説です。

これとは別に、貯蔵エネルギー源が枯渇するよう長時間の運動では体タンパク質が分解され、生じたアミノ酸がエネルギー源として利用されます。

この際に脱アミノ反応で生じるアンモニアが神経に対して毒性を持ち、これが疲労感の原因とするアンモニア説があります。

この2つの説は、末梢組織に由来する基質が原因となって疲労感を引き起こすとするものですが、実際には血中で遊離脂肪酸濃度やアンモニア濃度が増大するような運動は長時間、あるいは高強度のものとなります。

また、感染防御機構としても働くインターフェロンやインターロイキンなどのサイトカインも副作用として疲労感を生じることが知られています。

これは風邪などの時の疲労感の発生に影響しているのではないかと考えられています。

 

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