古来から伝わる鎮痛薬とは

 

紀元前400年頃のギリシア人は、痛風の痛みや発熱に苦しむ患者に、ヤナギの皮や葉を煎じて飲ませると症状が軽くなることを経験的に知っていました。

痛風は、血中に尿酸が増えすぎることで関節に炎症が起こる病気で、激しく痛みます。

それから2200年もの歳月を経た1838年、ヤナギの皮を煎じた液体から薬効成分が取り出されました。

ヤナギはラテン語でサリックスということから、その物質はサリチル酸と名づけられました。

それから約20年後の1859年、サリチル酸は大量生産されるようになり、鎮痛薬として重宝されました。

さらにそこからサリチル酸をナトリウム塩にしたサリチル酸ナトリウムがつくられ、痛風や関節炎による痛み止めの特効薬として利用されていきました。

現代ではサリチル酸を使った薬といえば、アセチルサリチル酸、いわゆるアスピリンがあります。

このアスピリンですが、今や知らない人がいないというほど有名な鎮痛薬です。

アスピリンという名は本来は商品名なのですが、あまりにも有名で日本薬局方でもアスピリンが正式名称になっています

1890年代、ドイツのバイエル社という製薬会社に勤務していたフェリックス・ホフマンという化学者は、彼の父親がリウマチによる関節炎に対するサリチル酸の胃炎等の副作用に苦しんでいたさまをみて、サリチル酸の鎮痛作用を持ちつつ、副作用の胃炎を起こさない物質を作ろうと決意しました。

試行錯誤の末、サリチル酸にアセチル基をくっつけたアセチルサリチル酸が作られ、アスピリンとして販売されました。

現在でもアスピリンに対する研究は進められ、新たな知見が数多く報告されています。

実際にアスピリンの作用メカニズムが明らかにされたのは、アスピリン発売から70年以上経った、1970年代のことでした。

紀元前400年代にすでに鎮痛薬として確立されていたヤナギがサリチル酸、それからアセチルサリチル酸として姿を変え今日まで使われ続けているというのは何とも感慨深いものがあります。

この他にも、古来から伝わる健康法、治療法は数多くあります。

これらは似非科学として扱われがちですが、気が遠くなるほど長い経験値に基づく方法なのですから、必ずしもすべてが無意味なものではないかもしれません。

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