股関節にある二関節筋に対するストレッチの有効性

臨床家は、筋骨格系の治療と予防に筋のストレッチングをよく用います。

股関節の二関節筋、とくにハムストリングスと大腿直筋は理学療法士やアスレティックトレーナーなどにとっては重要な治療対象であると言えます。

これらの筋の柔軟性の低下により、骨盤や股関節、膝関節など複数の場所において姿勢と可動域を変化させます。

これらの部位における機能障害とこれらの筋の明らかな硬さの増加は関連しており、いくつかのエビデンスが筋のストレッチが怪我を予防する事実をサポートしています。

たとえば、軍隊の基礎的な練習において、規則的なハムストリングスのストレッチを組み入れることで怪我の発生を抑えられたという報告があります。

ハムストリングスは非常に多くの関節を横断するので、安静位と動作を組み合わせることによってストレッチを行うことができます。

自分自身で行う二関節筋のストレッチを2つ取り上げその有効性を考えていきます。

まずはハムストリングスのストレッチです。

よく行われる方法の1つが、膝関節完全伸展位で股関節屈曲角度を増やしていく方法です。

このストレッチでは、ハムストリングスは筋緊張が増し、坐骨結節を前方へ引っ張り、結果として骨盤後傾が増加して、腰椎前弯が減少します。

理論的に、この骨盤後傾はハムストリングスのストレッチ効果を減少させます。

さらにストレッチ効果を増やすためには、ハムストリングスの拮抗筋である大腿直筋と多裂筋を収縮させます。

これらの筋は、固定された大腿骨に対し骨盤を前方へ回転させることによって、大腿骨上の骨盤運動による股関節屈曲を行うため、ハムストリングスの拮抗筋と考えられています。

大腿直筋と多裂筋の収縮は腰椎前弯を増加させ、ハムストリングスを伸張させます。

大腿四頭筋を収縮することによって、大腿直筋は膝関節伸展位に保ちながら、股関節を屈曲できます。

この大腿四頭筋の安定化作用は、ハムストリングスが緊張することによってつくられる膝屈曲を阻止します。

次に大腿直筋のストレッチです。

このストレッチには、立位または片膝立ちでの股関節伸展と膝関節屈曲を組み合わせた姿勢がよく採用されます。

ストレッチされている大腿直筋の他動的伸張の増加により、骨盤前傾が増加します。

腹筋や大殿筋の収縮は、大腿直筋を含めた全ての股関節屈曲筋をストレッチすることができます。

腹筋と大殿筋は、固定した大腿骨上の骨盤運動による股関節伸展を行うので、大腿直筋の拮抗筋になります。

この骨盤後傾はまた、多くの股関節包、とくに腸骨大腿靭帯付近のストレッチに役立ちます。

これら2つの例は、緊張している筋の拮抗筋を随意収縮させることがその効果を強化しています。

この方法は、多関節筋が直接的、間接的にどのような影響を与えているかについて確実な理解が必要です。

この方法を支持している主な機構は相反性抑制によるものですが、この効果を更に高めるためには、クライアントまたは患者自身がこのストレッチへ積極的に参加し、骨格筋の生体力学的な理解を高める必要があるといえます。

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