ロコモーション(移動)の神経機構

ロコモーションとは、目標に向かって、無意識に上下肢を動かし進む移動運動のことを指します。

ロコモーションの発現には姿勢制御が欠かせません。

ロコモーションと姿勢制御には、大脳、大脳基底核、小脳を上位レベル、視床下部、中脳、脳幹を中位レベル、脊髄、末梢神経を下位レベルとする3つの神経系が関与します。

主な制御系は中位レベルで、これには視床下部ロコモーション領域、中脳ロコモーション領域(mesencephalic locomotor region ; MLR)と脚橋被蓋核(pedunculopontine nucleus ; PPN)が含まれます。

MLNとPPNは橋の橋中心被蓋野腹側部(ventral tegmental field ; VTF)と橋中心被蓋野背側部(dorsal tegmental field ; DTF)へ投射し、それぞれ伸筋群の筋緊張亢進と脱力に関与するとともに、下位レベルの神経系、脊髄にある脊髄ロコモーション駆動系(spinal stepping generator ; SSG)に投射しています。

SSGは、上腕分節と腰仙分節に中枢をもつ回路で、脳幹部ノルアドレナリンおよびセロトニン神経系からなるモノアミン系網様脊髄路を介する姿勢維持系の入力、さらにMLR、PPNからの入力が腰仙部中枢に入ることにより、2つの中枢間のサーキットが駆動され、律動性神経伝達が誘発され、ロコモーションを発現させます。

また、SSGの2つの中枢には、上肢または下肢伸筋の固有受容器からの緊張性入力があり、これらの活性化もSSGを駆動させます。

一方、小脳深部核のひとつである室頂核は、MLRと同様の機序でロコモーションを駆動するとともに、SSGからの入力も受け、それは視床を介し、大脳へ伝達されます。

したがって、ロコモーションは、左右の相反運動を伴う上下肢協調運動であり、脊髄腰仙部と上腕部の膨大部に中枢をもつSSGの神経回路の回転により発現します。

これは、脳幹部の姿勢維持、抗重力筋活性化に関与する脳幹アミン系から腰仙部歩行中枢への緊張性入力によって駆動されます。

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