棘上筋と腱板症候群

棘上筋はおそらく肩関節複合体を全体で最も頻繁に使用されている筋であろうと推測されます。

外転の際の三角筋の補助という役割に加えて、肩甲上腕関節の動的安定性、また、静的安定性にも関与しています。

バイオメカニクス的には、棘上筋はごく普通の日常活動においても、内在的なストレスの標的となります。

棘上筋における肩外転時の内的モーメントアームは、25mmであるため、手が肩甲上腕関節から50cm遠位にあってその負荷が支持されていると仮定すると、その際の力学的有利性は1:20となります。

この数値は、棘上筋が重量負荷に対して20倍の力で働く必要があることを意味しています。

棘上筋への過剰な摩耗は腱板を構成する他の筋の過剰な摩耗と関連しています。

こういった症状をまとめて、腱板症候群と呼ばれます。

外傷、オーバーユース、反復される烏口肩峰靭帯、肩峰、関節窩周辺に対するインピンジメントなど多くの要因がその発生に関わります。

症状としては、腱板構成筋群の部分的あるいは完全な肥厚性断裂や炎症、肩鎖関節の変形性関節症、疼痛、肩全体の脱力感が含まれます。

棘上筋は、その血行の不良と加齢変化が加わると、さらに変性にさらされやすくなります。

腱板症候群の重症度次第で肩甲上腕関節での関節包内運動は完全に阻害され、肩に炎症と痛みを生じ、その結果、自動、他動的な運動は制限された非可動状態に陥ります。

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