神経の可塑性について考える

神経の可塑性とは、新しい経験を経て、神経細胞の活動が変化し、新たな神経細胞間のネットワークが形成され、そのネットワークの機能が変化するということです。

神経可塑性を考えるうえで、重要な原則があります。

同期して活動するニューロン間はたとえ離れた脳領域に存在しても、神経回路は生成され、反復して頻繁に使用される神経回路網の機能は強化され、使用しない神経回路網の機能は失われるということです。

神経回路網の発達・形成に関しては、ノーベル賞受賞者であるEdelmanが提唱したオペレータ仮説が重要になります。

これは環境に適応して発達を遂げてきた脳の神経回路網は、顕著な活動を持つ神経細胞群が選択されることにより発達を遂げるという説です。

したがって、可塑性の獲得には、標的する神経回路網とこれを構成する神経細胞群の活動をどのように上昇させるのかを考えることがポイントとなります。

可塑性は、学習により獲得され、記憶の生成にも欠かせません。

もし、神経系機能が損なわれたとしても可塑性によって補償することができるかもしれません。

しかし、脳に可塑性があることは脳にとって良いことばかりではないのかもしれません。

先述の通り、脳の可塑性は、同期して活動する神経細胞間に形成される神経回路を繰り返し使用することにより形成されます。

その例として、局所性ジストニアが挙げられます。

これは、特定の動作時に出現する運動障害です。

スムーズな動作は、拮抗筋による相反的な筋収縮に伴う円滑な関節運動で実現されます。

しかし、この病態では、拮抗筋が共収縮するために関節運動が制限されます。

バイオリニストやピアニストなどの音楽家やタイピストなど手指の複雑な精緻運動機能を必要とする職業人にしばしば出現するため、職業性ジストニアと呼ばれることがあります。

局所性ジストニアに罹患した音楽家の多くが、高度の完璧主義と不安傾向を持つことが示唆されており、過度の運動学習とその強化によって新たに形成された神経回路の可塑性が、この病態を誘発すると考えられます。

この他にも、神経可塑性が関与している障害をいくつもあります。

正の側面だけでなく、負の側面からも考えてみる必要がありそうです。

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