立位姿勢の安定性

安定性とは、平衡状態からの変位に対する物体の抵抗と定義されます。

方向が正反対の2つの等しい力が物体の同時に作用していると、力のつり合いがとれて、物体の位置の変化や運動は起こりません。

そういった平衡状態を維持しようとする性質が安定性です。

静止状態は力学的に平衡状態と考えることができます。

そこに外力が加わると、それまでの平衡状態は破られます。

その外力が弱ければ、その影響がなくなったときには、元の状態に復帰することができます。

人間は重力をはじめとして何らかの外力を受け続けています。

重力の影響下で人間が立位姿勢を保持するとき、複数の要因が安定性に影響しています。

まず重心の高さが挙げられます。

重心の位置は、低ければ低いほど安定性は良くなります。

立位よりも座位のほうが重心の位置は低いため、安定性は良くなります。

また、立位でも、上肢を挙上すると重心の位置が高くなるため、安定性は低下します。

次に支持基底の広さも関与します。

支持基底とは、両足で立位を保持している場合、両足底とその間の部分を合計した面積のことをいいます。

支持基底が広ければ広いほど安定性は高まります。

両足を密着させた立位よりも、両足を離した立位のほうが安定性はよくなります。

また、支持基底内の重心線の位置が中心に近いほど安定性は高まります。

重心線に位置が辺縁に近くなると、わずかの外力によって重心線が支持基底から逸脱し、転倒してしまいます。

両足立位から片足立位になると、支持基底の減少と同時に、重心線の位置が相対的に辺縁になるため、不安定な状態になります。

他に、心理的要因や生理的要因が関わります。

視線を遮断したり、高所から見下ろしたりすると、身体動揺が増強し、安定性は低下し、バランスを失います。

また、抗重力機構に問題があると、安定性の低下は免れません。

この他にも、質量や摩擦、構造物的特徴などが挙げられます。

身体機能が強く関与しているように思えますが、それ以外の要素の重要性も高いようです。

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