顎関節ストレスと姿勢

筋解剖学に基づくと、頭部の位置が下顎の安静位置に影響を及ぼすと考えることは容易なものです。

たとえば、慢性的な頭部前方位を呈した姿勢において、突出された頭部を観察すると、上部胸郭と下部頚椎の屈曲と、上部頚椎と頭蓋頚椎部の伸展を伴っていることが分かります。

この姿勢は、舌骨の下方・後方への牽引力を作り出し、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋などの舌骨下筋群を伸張させます。

その牽引は、顎二腹筋前腹のような舌骨上筋を介して、下顎に伝えられます。

その結果、下顎は後退と下制の方向に引かれます。

肩甲舌骨筋は肩甲骨に付着しているため、肩甲帯の不良姿勢、たとえば、極端な下制や下方回旋、肩甲胸郭関節での後退は筋をさらに伸張位にさせ、下顎を引っ張ります。

下顎の安静位置を変えることは、下顎窩内の関節突起の位置を変化させます。

関節突起が後方へ変位すると、繊細な後円板層は圧迫され、炎症や筋スパズムを引き起こしてしまいます。

下顎を突き出す姿勢を取ってしまうのはこの後円板層の圧迫を避けるために自然に起こりうるものであることや、突き出すことで起こる筋のスパズムが結果的に関節円板を関節突起に対して前内方へ異常に位置させることが考えられます。

この、「肩甲胸郭関節の異常姿勢は下顎の位置に影響を及ぼし、最終的に顎関節に対する負荷を増加させる」という前提は、姿勢や運動の評価だけでなく、顎関節障害の評価においても臨床的な見解を補強するものであると言えます。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

ピックアップ記事

  1. 2017-9-22

    リュックサックによる腰椎への圧縮軽減

    リュックサックはバッグとしての優れた役割もさることながら、腰椎への負荷軽減ギアとしても効果を発揮しま…
  2. 2017-9-5

    筋線維の形態的特徴について

    筋の形態は、張力発生能力、可動域、短縮速度に著しい影響を及ぼします。機能に影響を及ぼす形態的…
  3. 2017-7-19

    筋の拮抗的・共同的中和

    運動を円滑に遂行するために骨格筋はそれぞれ主動作筋、共同筋、拮抗筋と役割を持ちます。一般には…
  4. 2017-7-6

    鼠径部痛と内転筋損傷と恥骨炎

    鼠径部痛はスポーツ選手がよく訴える痛みの1つです。これらの痛みを訴える選手は、内転筋群の過緊…
  5. 2017-6-24

    筋肥大とパフォーマンスのジレンマ

    アスリートの肉体改造は、高いパフォーマンス性を生み出しますが、時として「あれは失敗だった」と言われる…

FACEBOOKもチェック!

注目TOPIC

  1. 2015-5-30

    核内受容体PPARγと肥満の関係

    肝臓は、糖質および脂質代謝を担う主要な組織であり、エネルギー代謝の中心的役割を担う組織です。…
  2. 2016-2-11

    関節軟骨とその特性

    関節の運動は滑液の拡散を促進し軟骨への酸素や栄養の供給を促すことで軟骨の維持に関与します。…
  3. 2015-6-23

    血糖値の恒常性

    グルコースは、摂食、消化された炭水化物が肝臓でグリコーゲンとして貯蔵され、グリコーゲンから変換されて…
  4. 2015-4-2

    筋のガーディングとは

    筋のガーディングとは、痛み刺激に反応する筋の持続的収縮であり、防御的に体が過度に動くのを防ぐためのサ…
  5. 2015-5-7

    体温調節機構

    だんだんと暖かく...というよりは暑くなってきましたね。私たちは、そんな環境の変化にどの…
ページ上部へ戻る