顎関節ストレスと姿勢

筋解剖学に基づくと、頭部の位置が下顎の安静位置に影響を及ぼすと考えることは容易なものです。

たとえば、慢性的な頭部前方位を呈した姿勢において、突出された頭部を観察すると、上部胸郭と下部頚椎の屈曲と、上部頚椎と頭蓋頚椎部の伸展を伴っていることが分かります。

この姿勢は、舌骨の下方・後方への牽引力を作り出し、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋などの舌骨下筋群を伸張させます。

その牽引は、顎二腹筋前腹のような舌骨上筋を介して、下顎に伝えられます。

その結果、下顎は後退と下制の方向に引かれます。

肩甲舌骨筋は肩甲骨に付着しているため、肩甲帯の不良姿勢、たとえば、極端な下制や下方回旋、肩甲胸郭関節での後退は筋をさらに伸張位にさせ、下顎を引っ張ります。

下顎の安静位置を変えることは、下顎窩内の関節突起の位置を変化させます。

関節突起が後方へ変位すると、繊細な後円板層は圧迫され、炎症や筋スパズムを引き起こしてしまいます。

下顎を突き出す姿勢を取ってしまうのはこの後円板層の圧迫を避けるために自然に起こりうるものであることや、突き出すことで起こる筋のスパズムが結果的に関節円板を関節突起に対して前内方へ異常に位置させることが考えられます。

この、「肩甲胸郭関節の異常姿勢は下顎の位置に影響を及ぼし、最終的に顎関節に対する負荷を増加させる」という前提は、姿勢や運動の評価だけでなく、顎関節障害の評価においても臨床的な見解を補強するものであると言えます。

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