温度不耐性について

外傷によって神経が傷ついたあとにみられる神経障害性疼痛や、腰痛、関節痛などの慢性痛では環境温度の変化に対する耐性が下がり、わずかな温度変化でも痛みが増加するケースが少なくありません。

このような状態を温度不耐性と呼び、ヒトの場合は主に低温不耐性となって現れます。

極端な高温・低温に曝露された場合は別として健康なヒトの皮膚や深部組織は、日常体験する程度の気温や室温の変化だけで痛くなることはありません。

ところが、神経を傷つけた後に長く続く痛みやその他の原因で慢性的な痛みがある身体部位では環境温度の変化に対する耐性が下がり、ちょっとした温度の違いや患部の冷却で痛みが増すことは少なくありません。

環境温度の感知はヒトを含めた生物にとって重要な機能の一つです。

これがすべての生理機能が温度に依存して変動するためであり、生物は自らに適した生育環境を得るために温度感知メカニズムと温度適応性を獲得してきました。

ヒトの温覚は、太さの細い神経のAδやC線維の末梢である自由神経終末が伝えます。

そこで環境温度の変化が電気信号に変えられ、中枢へと伝えられることで知覚することが出来ます。

これらに神経繊維は主に痛覚情報を伝えますが、非侵害レベルの温覚情報も伝えることが分かっています。

神経が傷つくと、傷ついた部位の末梢側では神経細胞体との連絡が断たれ栄養が行かなくなりワーラー変性が起こります。

一方で傷ついた部位の中枢側では神経再生のプロセスが始まり、同時に神経損傷部位のシュワン細胞では、神経成長因子の産生が高まり、神経再生のプロセスが高まります。

損傷を免れた線維は神経成長因子の働きで、ワーラー変性によって消失した組織に向かって増殖します。

また、神経損傷部位では、炎症反応が進むことから、局所で痛みを引き起こす生理活性物質が産生され、それらは温度変化を電気信号に変えるためのタンパク質(TRPチャネル)の活性温度閾値を下げます。

そのため、活性化閾値が下がれば、通常では痛みを引き起こさない温度変化でも痛みを感じたり、それが過敏になったります。

慢性痛においてもこのようなメカニズムが働いているとされています。

慢性痛は精神的・肉体的なストレスがあると悪化することが知られています。

このことは慢性痛悪化のメカニズムに交感神経が関与していることを示しており、このような病態を交感神経依存性疼痛といいます。

低温環境や高温環境はストレスの原因となりうるので、交感神経系の興奮が引き起こされれば、疼痛は悪化すると考えられます。

しかし、慢性痛においてラットをモデルにした実験では交感神経を切除しても低温環境下での疼痛行動が抑制されなかったという報告もあります。

したがって、慢性痛においても交感神経の興奮性の変化だけではなく、チャネルの活性化、その神経線維の増加などが原因となるものだと考えられます。

 

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