神経新生とは新しく神経細胞が生まれる現象です。

20世紀にラモニ・カハールによりニューロン説が唱えられて以来、「成体の脳では新たな神経細胞は生まれない」という考えが一般的になっていました。

しかし、1960年にジョセフ・アルトマンらが新生ニューロンを発見してから、それについての研究は飛躍し、1990年代後半までにはヒトも含めたすべての哺乳類で神経新生が起こることが証明されました。

マウスやラットなどげっ歯類の脳における神経新生は主として脳室下帯と海馬の歯状回に限定して起こります。

側脳室周囲の脳室下帯で生まれたニューロンは嗅球へと移動し、介在ニューロンに分化し、既存の神経回路に取り込まれます。

一方、海馬では顆粒細胞層と歯状回門の間に位置する顆粒細胞下帯とよばれる帯状の領域に神経幹細胞が存在し、顆粒細胞下帯で申請したニューロンは近接した顆粒細胞層に組み込まれます。

特に海馬歯状回での神経新生は学習、記憶能力やうつ病の発症・改善と関係し、数多くの研究がなされています。

また、運動により海馬の神経新生が増加することが発表されて以来、運動と神経新生に関する数多くの研究が発表されています。

運動が海馬の神経新生を増加させる要因は大きく二つに分類されます。

一つは血液由来因子、もう一つは脳由来因子です。

主要な血液由来因子の一つはインスリン様成長因子1(insulin-like growth factor-1:IGF-1)です。

IGF-1は主に肝臓と骨格筋で産生されるホルモン様物質で、体内のIGF-1量は加齢に伴い低下し、それに伴い海馬の神経新生も低下します。

加齢マウスへのIGF-1投与は加齢による神経新生の低下を抑制し、運動は循環する血液から脳内に取り込まれるIGF-1量を増加させ、神経新生の増加をもたらします。

血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は血管新生を増加させる因子として知られていますが、VEGFは海馬の神経新生を促進させる作用も持ちます。

一方、脳由来因子としては脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)があります。

BDNFは神経細胞で産生される液性タンパク質で、神経細胞の生存や成長、シナプスの発達、海馬の神経新生の促進などの神経細胞の成長に重要な働きを持ちます。

IGF-1やVEGFのような生体内物質とは異なりますが、運動による脳血流量の増加も神経新生の増加に関係します。

以前では運動時の脳血流量は変化しないとされていましたが、近年の研究では、変化していて、さらに海馬歯状回の血流量が増加することが明らかとなりました。

海馬歯状回の血流量の増加はIGF-1やVEGFが血流を介して海馬歯状回に運ばれる量を増加させ、結果的に神経新生の増加に貢献すると考えられています。

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