核内受容体PPARγと肥満の関係

肝臓は、糖質および脂質代謝を担う主要な組織であり、エネルギー代謝の中心的役割を担う組織です。

通常、過剰なエネルギーは主に脂肪組織に蓄えられますが、肝臓も程度の差はあるものの、脂質の貯蔵庫になります。

一般的に肝実質細胞に脂質が蓄積された状態は脂肪肝と総称され、その発症機序からアルコール性、非アルコール性脂肪肝に大別されています。

非アルコール性脂肪肝は、薬物や毒物の暴露、妊娠などでも生じることが知られていますが、メタボリックシンドロームとして肥満あるいは2型糖尿病などに併発する場合が多くあります。

その発症原因については多様な因子の関与が推測されることから、単に肝における脂質合成・分解のバランスの破綻として考えられていました。

しかし、近年の研究により具体的な原因因子の存在を示唆する結果が得られてきました。

PPARγは、ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する核内受容体であり、現在α、δ、γの3つのサブタイプが知られています。

このうちPPARγは主に脂肪組織に高発現するサブタイプであり、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化に必須な因子として報告されています。

通常、正常マウスの肝臓ではPPARαが高発現しており、PPARγの発現レベルは低くなっています。

ところが、2型糖尿病モデルマウスにおいては例外的に発現しており、これらのマウスは非アルコール性脂肪肝のモデルでもあるため、肝実質細胞における過剰な脂質の蓄積を特徴とします。

また、PPARγの発現誘導は疾患モデルマウスの脂肪肝だけでなく、正常マウスにおける高脂肪食誘導性脂肪肝においても報告されました。

脂肪肝に誘導されるPPARγの役割は、これを欠損させたマウスの高血糖、耐糖能、インスリン抵抗性のさらなる悪化を招いたことから、関節的ではあるものの、全身性の血糖およびインスリン感受性にも関与していることが示唆されました。

脂肪肝におけるPPARγの発現誘導は、迷走神経の肝臓枝を介する神経シグナルの発生を促し、このシグナルが脳に伝達され交感神経を活性化することによってエネルギー消費を増加すなわち体重増加を抑制し、インスリン抵抗性や耐糖能を改善するというものです。

肝臓に発現誘導されるPPARγは、肥満などによる過剰な脂質を肝臓に蓄えることで、エネルギー消費をもたらす神経シグナルを発生させ、より深刻な全身性の疾患の悪化を防いでいるかもしれません。

 

 

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