筋細胞内の刺激伝達たんぱく質「エムトア」

骨格筋が緩やかに減少していくことは高齢者の筋発揮能を考える上で非常に重要である。
加齢に伴う骨格筋の減少過程では、筋の萎縮は25歳から30歳くらいから始まり、年齢を重ねるほど萎縮の割合が多くなると報告されている。

骨格筋の基本的な収縮特性は加齢によって変わるものではないが、筋肉の太さの減少が筋肉全体の力や機能低下を招いていて、高齢者のからだの衰弱をもたらすのである。

特に加齢による筋肉量の減少と機能低下は一般的にサルコペニアと呼ばれ、身体機能は低下し日常の動作は鈍くなる。
そんなことから、高齢者の転倒や衰弱、要介護などのリスクを増大させている。

骨格筋の太さは、筋たんぱく質合成と分解割合の継続的な変動によってコントロールされている。
特に、筋肉の太さの変化は筋タンパク質の合成と分解の不均衡がもたらすものであるといわれている。

最近の研究では、筋たんぱく質分解に比べ筋たんぱく質合成のほうがよりダイナミックに筋の太さに関係するといわれ、異化よりも同化の働きに注目が集まっている。
そしてトレーニングなどの身体活動と栄養が骨格筋たんぱく質合成のもっとも重要な刺激であることがわかってきた。

言い換えれば、骨格筋内の生物学的プロセスにおいて、身体活動と栄養がたんぱく質同化を誘発して、筋の太さに強く影響しているということがわかってきている。

しかしながら、まだ身体活動と栄養がどのように筋のたんぱく質合成に関与するのか詳しくは解明できていない。

刺激効果として細胞内の刺激伝達を担うエムトア(mTOR)の活性が必要という研究報告はある。

このエムトアは、細胞の栄養状態やエネルギー、酸化還元状態、成長因子の存在などの総合的な細胞環境を判断し、細胞を成長させるかどうかを決定していると考えられている。

エムトアの研究が進めば、より効果的に刺激に対しての筋の太さの影響力を理解することができるのかもしれない。

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