神経の興奮伝導

神経細胞体で活動電位が発生すると、その活動電位は軸索を末梢の方向に伝わっていきます。

これを興奮の伝導といいます。

活動電位が発生すると、それまで細胞外が正、細胞内が負に帯電している状態から逆転し、細胞外が正となります。

これによって興奮している部分と興奮していない部分との間に電位差を生じ、電流が流れます。

これを局所電流といいます。

局所電流によって興奮部位に隣接する部分が刺激され、隣接する部位に活動電位が発生、再び局所電流が発生し、といった具合に次々と隣接部位に活動電位が発生して興奮が伝播していきます。

このため、長距離を伝導しても減衰することなくまた、神経末などで1本の神経線維で興奮してもその興奮がほかの線維を興奮させることはありません。

 

有髄神経線維は絶縁性の高いミエリン鞘で包まれているため、局所電流は鞘で包まれていないランビエ絞輪から次のランビエ絞輪へとジャンプするように伝導していきます。

これを跳躍伝導といいます。

跳躍伝導では伝導速度が無髄の場合の50倍以上大きくなるばかりでなく、軸索の全長にわたって活動電位を発生させる必要が無いため、活動電位の発生と、その後のイオン環境の回復(Na+ – K+ポンプによるNa+の汲み出し)のためのエネルギー消費の節約効果が高くなります。

軸索の末端は神経終末とよばれ、標的細胞の細胞膜との間にシナプスを形成します。

神経終末は足のように膨大し、中に神経伝達物質が入った多数のシナプス小胞を含んでいます。

神経終末と標的細胞との間は20〜50nm離れており、シナプス間隙と呼ばれます。

標的細胞の細胞膜上には神経伝達物質を結合する多数の受容体が発現しています。

活動電位が軸索を伝導して神経終末に到達すると、神経終末が脱分極します。

これによって神経終末に存在する電位依存性のCa2+チャネルが開口し、Ca2+が細胞内に流入します。

細胞内に流入したCa2+はCa2+受容タンパク質に結合し融合を引き起こします。

細胞膜に融合したシナプス小胞は中に含まれていた神経伝達物質をシナプス間隙に放出します。

このような分泌のしかたを開口分泌(エクソサイトーシス exocytosis)といいます。

放出された神経伝達物質はシナプス間隙を拡散によって移動し、標的細胞の受容体に結合します

代表的な神経伝達物質であるアセチルコリンを例に取ると、ACh受容体はイオンチャネル内蔵型受容体であり、AChが結合することによってチャネルが開き、Na+細胞内に流入して脱分極を引き起こします。

通常、1回の活動電位で放出される神経伝達物質の量が少ないため、それだけで標的細胞に活動電位が発生することはありません。

しかし、短時間間隔で続けざまに何回も活動電位が到達することで、脱分極が十分に大きくなれば標的細胞に活動電位が発生します。

これを時間的加重といいます。

また、多数のシナプスが同期して神経伝達物質を放出した場合も脱分極が大きくなり、活動電位の発生に繋がります。

これを空間的加重といいます。

このような標的細胞を興奮させるシナプスを興奮性シナプスといい、標的細胞に出現する脱分極を興奮性シナプス後電位(excitatory post synaptic potential:EPSP)といいます。

一方、標的細胞の興奮性を抑えるシナプスも存在し、それらは抑制性シナプスとよばれます。

抑制性シナプスの標的細胞に現れる過分極を抑制性シナプス後電位(inhibitory post synaptic potential:IPSP)といいます。

この抑制性シナプスによる抑制をシナプス後抑制といいます。

シナプスにおいて興奮が神経細胞から標的細胞へと受け渡されることを興奮の伝達といいます。

また、神経細胞と神経細胞とがシナプスを作っている場合、興奮を伝える神経を節前線維、興奮を受け取る神経を節後線維といいます。

シナプス伝達の特徴は、伝導とは異なり一方向性であること、標的細胞から神経細胞へと興奮が伝わることがないこと、シナプス伝達の速度は興奮の伝導よりもはるかに遅いため、多くのシナプスを介する経路ほど、興奮が最終標的細胞に達する時間がかかることです。

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