脳の記憶とコンピューターの記憶

脳の記憶とコンピューターの記憶はどちらが正確であるだろうか?

答えは間違いなくコンピューターに軍配があがるだろう。

それぐらいコンピューターは正確であり、ヒトの脳は曖昧に記憶を構成する。

しかしながら、この曖昧に記憶することがヒトとしては大事なことなのである。

ひとつの理由としては、脳自体のキャパシティの問題。
神経細胞の塊の脳みそだって、全ての出来事を記憶できるほどの容量は持ち得ない。

もうひとつの理由は「応用」というキーワード。
記憶を写真のように鮮明に覚えることはコンピューターでは可能である。
しかしながら、ヒトの脳は少なくとも写真のように記憶するという活動を行ってはいない。

むしろ、そこに存在する何らかの特徴やルール、共通項みたいなものを自動的に選びだしているのである。

例えば、完璧に記憶を捉えようとすると、もしそれが少しでも違う場合、それらは似て非なるものとなる。

仮に「A」というヒトがいたとして、髪型、服装が違った場合、完璧を求める記憶ではそれぞれ別人に認識してしまうかもしれない。

つまり100%の記憶っていっても、その記憶の条件となかなか同一な条件はない。
昨日、今日、明日と同じ状況というのはもう二度とこないのだから、記憶を完璧にというのはあまり意味がないのである。

テストだって同じ問題なら解けるけど、ちょっと文章が違うと別物だと認識したら意味ないよねってこと。

だからこそ、人間というのは見たものそのものを覚えるんじゃなくて、そこに共通している何かを無意識に選択し覚えようとする。
条件が100%同じじゃなくても、特徴やルールが同じなら、それを同じものとして思い出せるように。

動物で考えると、実は下等な動物ほど記憶が正確である。
ことわざで「雀百まで踊り忘れず」とあるが、単純な脳構造のほうが記憶が完璧なのである。
しかしながら、単純な構造ゆえ、裏を返せばあるがままでしか覚えられない、つまり融通・応用が利かないということになるのだ。

記憶があいまいであるということはこの「応用」という観点から重要な要素なのである。
この記憶の曖昧さこそが、人間の臨機応変な適応力の源にもなっているということである。

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